山下宏明 (国文学者)

山下宏明（やました ひろあき）は、1931年8月18日に生まれた日本の国文学者であり、名古屋大学の名誉教授です。彼の専門は、日本の古典文学の中でも特に『平家物語』をはじめとする軍記物語であり、その研究は世界的に高い評価を受けています。

山下宏明は、神戸市で生まれ、1958年に神戸大学文学部国文科を卒業しました。その後、東京大学大学院に進学し、国文学の博士課程を1964年に満期退学しました。1986年には「平家物語の生成」という研究で文学博士号を取得しました。彼の学術的なキャリアは、金城学院大学助教授から始まり、その後名古屋大学教養部助教授、さらに文学部助教授、教授へと進みました。1995年に名古屋大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与されました。退官後は、愛知淑徳大学の教授として教鞭を執り、2007年に定年退職しました。

山下宏明の研究は、単に古典文学を読み解くだけでなく、軍記物語がどのようにして生まれ、語り継がれてきたのか、その歴史的、文化的な背景にまで及びます。特に『平家物語』に関しては、テキストの成立過程、物語の構造、琵琶法師による語りの影響など、多角的な視点から分析を行っています。彼の研究は、軍記物語研究における重要な礎となっており、多くの研究者に影響を与え続けています。

著書としては、『軍記物語と語り物文芸』(1972年)、『平家物語研究序説』(1972年)、『軍記物語の方法』(1983年)、『平家物語の生成』(1984年)、『平家物語の成立』(1993年)などがあります。これらの著作を通じて、軍記物語の文学的な価値や、その成立における歴史的、社会的な要因を深く考察しました。また、『いくさ物語の語りと批評』(1997年)では、物語の語りという観点から軍記物語を捉え直し、『いくさ物語と源氏将軍』(2003年)では、物語と歴史的背景との関わりを論じています。さらに、『琵琶法師の『平家物語』と能』(2006年)では、語り物としての『平家物語』と能との関連性を指摘し、『『平家物語』入門 琵琶法師の「平家」を読む』(2012年)では、より一般読者にも理解しやすい形で『平家物語』の魅力を伝えています。また、『『平家物語』の能・狂言を読む』(2018年)では、能や狂言における『平家物語』の受容を論じています。

山下宏明は、研究者としてだけでなく、古典文学の校注者としてもその才能を発揮しました。『源平闘諍録と研究』(1963年)や『平家物語』(1975年)、『太平記』(1977-88年)など、数々の古典文学作品を校注し、それらを現代の読者にも親しみやすい形に再編集しました。特に、『新日本古典文学大系 平家物語』(1991-93年)は、その詳細な校注と解説により、現代における『平家物語』研究の基盤となっています。また、編著としては、『平家物語の世界』(1985年)や『平家物語受容と変容』(1993年)、『軍記物語の生成と表現』(1995年)などがあり、これらを通して、『平家物語』をはじめとする軍記物語の多角的な研究を推進しました。

山下宏明の研究業績は、日本の古典文学研究において重要な位置を占めています。その緻密な分析と、多角的な視点からの考察は、多くの研究者に影響を与え、また、その著作や校注は、古典文学を現代に伝えるための重要な役割を果たしています。

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