山下義信

山下義信の生涯とその業績

生い立ちと実業界への進出

山下義信（やました ぎしん）は1894年に広島県呉市で呉服商の家庭に生まれました。彼は明治大学にて学ぶも中退し、実業界に進むことになります。1924年には広島日刊新聞の社長に就任し、その後も百貨店経営など様々なビジネスに関与しました。

戦争と悲劇

第二次世界大戦が勃発すると、山下は召集され、戦争の終息時には五島列島の砲兵部隊に配属されます。終戦直後、彼が広島市へ戻ると、原爆投下による深刻な状況を知り、特に次男がその悲劇により命を落としていたことに深い悲しみを感じました。広島市やその周辺地域には多くの戦災孤児が存在し、山下はこの問題に対して何とかしなければならないと考えました。

社会福祉への取り組み

山下は自身の私財を投じ、「広島戦災孤児収容所」を設立します。この施設は1953年1月まで運営され、約170名の原爆孤児が生活しました。収容所は後に「広島戦災児育成所」と改称され、社会福祉法人として、最終的には312名の孤児たちが新たな生活をスタートさせました。

収容所ではただ食事を提供するだけでなく、彼は衛生面にも十分な配慮を行いました。例えば、闇米を仕入れることで安定した食料の確保を図り、害虫の駆除や着替えの指導を行い、孤児たちの日常生活が清潔で快適になるよう努力しました。また、山下は自らの実子もこの施設に入所させ、孤児たちと平等に扱うことを心掛けました。さらに、掃除や挨拶の重要性を教えることで、しつけにも力を入れました。

政治家としての道

1947年4月、山下は広島県選挙区から無所属で第1回参議院議員通常選挙に立候補し当選を果たしました。1953年には右派社会党からの公認で再選され、参議院厚生委員長や党政審副会長、中央統制委員等を歴任し、政治家としても精力的な活動を展開しました。

特に千鳥ケ淵の戦没者墓苑の建設を推進し、役員を務めた他、原爆遺児後援会の会長としても社会貢献を続けました。浄土真宗本願寺派の僧籍を持ち、童心寺の住職としても活動し、宗教的な側面からも地域社会に貢献していました。

最晩年と評価

1989年7月30日に95歳で入滅し、彼の死後には従四位に叙され、多くの人々にその功績を称えられました。山下義信は、政治家・実業家としてだけでなく、社会福祉家として生涯を捧げた、まさに尊敬すべき人物でありました。彼の取り組みは、戦後日本の社会福祉の基盤を築く一助となったのです。

栄典

• - 1965年：勲二等瑞宝章
• - 1989年：従四位

彼の人生や業績についての記録は、現代に生きる私たちにとっても、多くの示唆を与えています。

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