山内豊健

山内豊健：武道の道を極めた名剣士

山内豊健（やまうち とよたけ）は、1903年（明治36年）8月16日に生まれ、1946年（昭和21年）1月10日に44歳でこの世を去った武道家です。彼は、大正から昭和初期にかけて、剣道と居合術の達人として名を馳せました。特に、京都山内派長谷川英信流居合術の第18代宗家としての功績は大きく、その卓越した技術と指導力は、後世に多大な影響を与えました。

生い立ちと武道への道

山内豊健は、子爵・山内豊尹の次男として東京で生を受けました。幼少期を高知で過ごし、海南中学校（現在の小津高校）で学びました。幼い頃から剣道と書道に才能を発揮し、特に居合術においては、祖父・山内容堂が幕末に修めた無双直伝英信流を、第17代宗家・大江正路から直接指導を受け、その奥義を極めました。

1918年（大正7年）、兄の隠居に伴い子爵を襲爵し、東京へと居を移しました。しかし、彼の情熱は武道にあり、大日本忠孝館道場では柳生神影流の免許皆伝を受け、大日本武徳会からは剣道錬士の称号を授与されました。その後、京都に移り住み、武道専門学校で剣道と居合術の指導にあたりました。また、善通寺師団、東京の明武館、埼玉の正明中学校でも指導を行い、多くの門下生を育てました。書道においても、三楽書道会や龍崎書道会に所属し、その才能を発揮しました。

結婚と晩年

1935年（昭和10年）には、北海道出身の片石アサ子と結婚しました。1938年（昭和13年）には、谷田佐一と共に『図解居合詳説』を著し、居合術の普及に貢献しました。1941年（昭和16年）には、大東亜戦争に応召し、陸軍少尉として善通寺騎兵連隊に配属されました。終戦後、引揚船の中でチフスに罹患し、1946年（昭和21年）に岐阜川崎病院で生涯を閉じました。

家族と門下

山内豊健は、名門の家柄に生まれ、多くの武道家を育てました。祖父は山内容堂、父は山内豊尹、母は松平信庸の娘である山内勝子です。兄に山内豊陽、姉に渡辺禎と白井恵美がいます。妻は山内アサ子で、北海道初の婦人警官として知られています。長男は山内豊臣で、長谷川英信流（京都山内派）の名誉会長を務めています。門下には、河野兼光、三谷義里、井下經廣、宇野又二などがおり、その技は孫弟子である山越正樹、木村幸比古、加茂治作らに受け継がれています。

著書と参考文献

山内豊健の著書には、『図解居合詳説』（谷田左一との共著）や、没後に編纂された『京都山内派無雙直傳英信流居合術』があります。これらの著書は、彼の居合術に対する深い理解と情熱を伝えています。

参考文献としては、『英信流居合と板垣伯』、『師伝芥考・土佐の英信流』、『江戸期の土佐における居合関係史』、『土佐武道史話』、『高知県人名事典』などがあります。これらの文献は、山内豊健の武道家としての生涯や、当時の武道界の状況を知る上で貴重な資料となっています。

山内豊健は、その卓越した武術の才能と、後進の育成に尽力したことで、武道史にその名を刻みました。彼の教えと精神は、今日まで多くの人々に受け継がれ、武道の発展に貢献しています。

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