山勢松韻

山勢 松韻について

山勢 松韻（やませ しょういん）は、日本の伝統的な箏曲の流派・山田流山勢派の家元の名跡であり、これまでに3代が続いています。初代は男性で、二代目および三代目は女性という特徴があります。各代はそれぞれ異なる背景を持ちながら、この流派を継承し発展させてきました。

初代松韻

初代松韻は弘化2年7月28日（1845年8月30日）に生まれ、本名は吉田専吉または千吉とされています。彼は非常に若い頃に失明し、これが彼の人生に大きな影響を与えました。幼少期には山田流山勢派の二世家元である二代目山勢検校に師事し、最初は山清勾当と名乗った後、山勢勾当に改名しました。その後、名跡を継承して山勢松韻を名乗るようになりました。

明治元年には山田流山勢派の三世家元としての地位を得て、特に音楽教育にも寄与し、1880年には文部省音楽取調掛に出仕。1890年の東京音楽学校開校式には「都の春」を作曲しました。彼の作品には「朧月」「花の雲」「四季の友」などがあり、多弦箏の開発にも貢献しました。初代の弟子には初代萩岡松韻や今井慶松などがいることも、この流派の発展に大きな役割を果たしました。

二代目松韻

二代目松韻は1916年1月20日に東京に生まれました。本名は木原良子（きはら よしこ）であり、初代の養女です。山田流山勢派の四世家元である山勢ふくの養女として育った彼女は、初代萩岡松韻や今井慶松に師事し、1936年に五世家元を襲名しました。彼女は音楽だけでなく、家庭の伝統を守り続けることにも力を入れ、2000年には自身の名跡を妹に譲って山勢崇華（やませ そうか）を名乗りました。彼女の継承に際し、山勢派は新たな特徴を持つようになり、これまでの伝統を尊重しつつも新しい風を取り入れていきました。

三代目松韻

三代目松韻は1932年12月6日に東京で生まれ、本名は木原司都子（きはら しづこ）です。彼女は幼少期から二代目松韻に指導を受け、東京藝術大学で中能島欣一に師事し、卒業後は大学院で修士課程を修了しました。また、清元志寿太夫や杵屋正邦、矢木敬二などの著名な先生方にも学び、NHK邦楽技能者育成会の第一期生としても活動しました。

三代目松韻は1986年から2000年の間に三度文化庁芸術祭賞を受賞し、1989年から2000年まで東京芸術大学の客員教授を務めました。その後も1996年には芸術選奨文部大臣賞、1998年に紫綬褒章を受章し、2000年には六世家元を相続しました。また、2001年には人間国宝に認定され、その後も数々の栄誉を受けました。2022年には文化勲章を受けるなど、彼女の存在は現代の箏曲界において確固たるものとなっています。

このように、山勢 松韻は、世代を超えて影響を与え合いながら、箏曲の伝統を意義深く継承してきた家元です。彼らの活躍は今なお、多くの人々に感動と感銘を与え続けています。

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