山口彊

山口 彊：二重被爆者の生涯

山口彊は、1916年3月16日、長崎県に出生し、広島と長崎での原爆攻撃を経験した唯一の二重被爆者としてその運命を歩みました。彼の人生は、戦争の悲劇と、それに対する不屈の姿勢に満ちています。

経歴と被爆

旧制中学校を終えた彼は、長崎三菱造船に入社し、艤装設計課で製図工として働き始めました。1945年5月、広島市に出張中の8月6日、原爆が投下され、山口は爆心地からおおよそ3キロの地点にあった広島電鉄江波線の電停で被爆します。この時、左の鼓膜が破れ、左半身には深刻なやけどを負いました。

被爆後、彼は翌日の救援列車で長崎に帰ることを決意しますが、その道中で再び原爆に直面することになります。8月9日、長崎市において再び原爆が投下され、山口は会社の事務所にいたため、二度目の被爆を経験しました。残念なことに、妻と子供も原爆が原因とされる癌で命を落としました。

戦後の生活

戦後、山口は長崎三菱造船を解雇されましたが、アメリカ海兵隊の通訳として新たに働く道を選ぶことになります。その後、中学校の英語教員を7年間務め、再び三菱造船に戻り、定年までタンカーの設計に従事しました。

また、彼は2006年に映像作品『二重被爆』に出演し、自らの体験を語りました。彼は原爆手帳を持つ唯一の二重被爆者として、両方の被爆が公式に記録されていましたが、後に広島の記載が消去され、2009年に復活させる過程を経ています。

残念ながら、2009年には原爆による後遺症と見られる癌が発覚し、その翌年には逝去しましたが、彼は93歳という長い生涯を全うしました。

映画と著作

山口は映画『二重被爆』に出演し、核兵器廃絶の重要性を訴えました。2007年には、自らの証言を綴った書籍『生かされている命』を出版し、さらに短歌を趣味として楽しむ一方で、その成果として『人間筏』も自費出版しました。

また、2011年には山口の生涯を描いたドキュメンタリー映画『二重被爆〜語り部 山口彊の遺言』が公開され、彼の想いと活動を伝える重要な作品となりました。

BBCでの取り上げ

彼の人生は、一度だけでなく二度の被爆を経験したという観点から、英国のテレビ番組『QI』でも討論の対象となりました。このことが物議を醸し、在英国日本国大使館が抗議の意を表しましたが、制作側からはその意図は誤解であったとの謝罪が行われました。これは、英国国内でも原爆問題をユーモアの視点で扱うことへの理解が不足していたことを示しています。

まとめ

山口彊の人生は、ただの被爆者ではなく、二重被爆を経験し、核兵器廃絶のメッセージを伝え続けた重要な存在として記憶されるべきです。彼の経験は、未来の世代に対しても核兵器の恐ろしさと、それに立ち向かう勇気を教えてくれるものです。

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