山岸忍

山岸忍とは

山岸忍（やまぎし しのぶ）は、1963年1月2日生まれ、滋賀県出身の実業家です。同志社高等学校、同志社大学を卒業後、1985年に大京観光株式会社に入社しました。その後、1997年に株式会社日経プレステージ（後のプレサンスコーポレーション）を設立し、代表取締役に就任。現在は、株式会社TUKUYOMI HOLDINGSの代表取締役を務めています。

逮捕と無罪

山岸は2019年12月16日、業務上横領の容疑で大阪地方検察庁特別捜査部に逮捕されました。この逮捕を受け、プレサンスコーポレーションは同月23日に山岸の社長辞任を発表しました。しかし、2021年10月28日、大阪地方裁判所は山岸の業務上横領罪での共謀を認めず、無罪判決を下しました。さらに、11月11日、大阪地検が控訴を断念したため、判決が確定しました。

事件の背景

この事件は、明浄学院の資金をめぐる複雑な経緯が背景にあります。検察は、山岸が明浄学院の買収資金を不正に流用したと主張しましたが、裁判では、山岸が資金の流れを正確に認識していなかったこと、また、客観的な証拠として「学校法人明浄学院M＆Aスキーム」という資料が存在し、資金が学校法人に貸し付けられると明記されていたことなどが示されました。検察は、山岸が資金の流れを認識していたと主張するため、関係者への厳しい取り調べを行い、虚偽の自白を強要したとされています。

検察の強引な捜査

大阪地検特捜部は、小林氏に対し「確信的な詐欺である」などと責め立て、山岸が計画を説明されていたという供述を強要しました。また、山下氏に対しても同様に、山岸の関与を認めるよう圧力をかけました。これらの取り調べは、証拠に基づかない、強引なものであったとされています。裁判では、これらの供述の信用性が否定され、山岸の無罪が証明されました。

裁判での証言と判決

公判で山岸は「横領に共謀した事実はない」と一貫して無罪を主張しました。大阪地裁は、山下の捜査段階での供述について、「検察官に迎合した可能性」を指摘し、証拠として採用しませんでした。また、小林の取調べ時の録音録画からは、検察官が供述を誘導する場面が明らかになりました。裁判所は、これらの証拠から、山岸が横領を共謀したという認識はなかったと判断し、無罪判決を言い渡しました。

山岸の心境

無罪判決後、山岸は「なぜもっと丁寧に捜査してくれなかったのか」と述べ、検察の捜査方法に疑問を呈しました。また、社長の地位を奪われたことへの無念さ、会社を子供のように思っていたこと、そして、逮捕された時の混乱や寒さなど、当時の状況について語っています。

弁護団の指摘

弁護団は、この事件が過去の冤罪事件と変わらない構造を持っていることを指摘しました。特に、検察が仮説に固執し、客観的な証拠を十分に分析しないまま、ターゲットを絞って供述を取ろうとする体質を批判しました。また、取り調べの可視化が、検察の問題点を浮き彫りにし、無罪判決につながったことを強調しました。

検察の反応と専門家の意見

検察幹部は、無罪判決への批判を受け止めつつ、組織としての意識改革を進めていると述べました。しかし、専門家からは、検察の体質が変わっていないとの批判や、証拠を積み重ねる姿勢の重要性が指摘されました。

国家賠償訴訟

山岸は、2022年3月29日、検察官による違法な取り調べがあったとして、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起しました。山岸は、検察が真実を明らかにしようとせず、有罪にするために手段を選ばない組織だと批判しました。さらに、検察官個人の功名心や保身、組織体制の問題が、冤罪を生み出す原因になっていると訴えました。

その後の展開

山岸が告発した検察官は不起訴処分となりましたが、山岸はこれを不服として審査を申し立てました。また、裁判所は検察官の取り調べに問題があったことを指摘しました。国家賠償請求訴訟では、検察官らの証人尋問が行われ、事件の真相解明に向けた動きが続いています。2024年8月には、大阪高裁が検察官に対する審判決定を下し、事件は新たな局面を迎えています。

著書

山岸は、この事件に関する著書『負けへんで！東証一部上場企業社長vs地検特捜部』を2022年に出版し、事件の詳細と自身の心境を綴っています。

この事件は、日本の司法制度における捜査の問題点、そして冤罪の恐ろしさを改めて浮き彫りにするものでした。山岸の体験は、今後の司法改革に向けた重要な教訓となるでしょう。

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