山手樹一郎

山手樹一郎：明朗快活な時代小説の巨匠

山手樹一郎（やまて きいちろう、1899年2月11日 - 1978年3月16日）は、明治から昭和時代にかけて活躍した日本の小説家です。栃木県黒磯町に生まれ、本名は井口長次。鉄道員であった父親の影響で幼少期を黒磯駅周辺で過ごしました。旧制明治中学校卒業後、編集者としてキャリアをスタートさせます。小学新報社や博文館で編集に携わり、『少年少女譚海』編集長も務めました。

編集者から時代小説作家へ

30代で兼業作家として執筆活動を始め、40代で専業作家となります。編集者時代は山本周五郎などの作家を担当する傍ら、自身も作品を発表していました。編集者名義では原稿料を受け取れないという事情から、筆名「山手樹一郎」を使用。当初は謎の覆面作家として活動していたというエピソードも残されています。

明朗爽快な作風

山手樹一郎の作品は、勧善懲悪、人情話、ハッピーエンドという要素が中心。明朗快活で爽快な読後感が特徴です。「偉大なるワンパターン作家」と評されることもありますが、その一方で、悲劇的な結末を避け、安心して読める作品世界を提供した作家としても高く評価されています。緻密な人物描写や、情感あふれる人情描写も人気の秘密と言えるでしょう。

代表作と映画化作品

山手樹一郎の代表作として、『桃太郎侍』『夢介千両みやげ』『又四郎行状記』『ぼんくら天狗』などが挙げられます。これらの作品は、時代劇映画としても数多く映像化され、人気を博しました。特に『桃太郎侍』は、幾度となく映画化・ドラマ化され、幅広い世代に親しまれています。また、『新編八犬伝』や『遠山の金さん』など、古典作品を独自にアレンジした作品も手がけています。これらの作品には、山手樹一郎独自のキャラクターや、独自の解釈が加えられ、新たな魅力が吹き込まれています。

出版作品

山手樹一郎は、春陽文庫を中心に多数の作品を出版。作品数は膨大で、長編・短編小説、時代小説、歴史小説など、多様なジャンルを手がけています。『山手樹一郎長編・短編小説全集』も刊行されており、その創作活動の幅広さが伺えます。また、作品集や自選集なども数多く出版され、後世への影響も計り知れません。その作品リストは以下のように膨大で、時代小説の黄金期を支えた一人として大きな足跡を残しています。

（以下、本文中に記載された膨大な作品リストは省略）

晩年とその後

日本作家クラブ会長も務めた山手樹一郎は、1977年に勲三等瑞宝章を受章。しかし翌年、肺癌のため79歳で逝去しました。長男は小説家の井口朝生、次男は国文学者の井口樹生、孫には詩人の井坂洋子がいます。

山手樹一郎の作品が愛され続ける理由

山手樹一郎の作品は、時代劇映画や舞台などにも数多く翻案されており、現代においても高い人気を誇ります。その理由として、明朗快活な作風、緻密な人物描写、そして何よりも、読者に爽快感と安らぎを与えてくれる物語の展開が挙げられるでしょう。時代を超えて愛され続ける山手樹一郎の作品は、日本の時代小説史に燦然と輝く金字塔と言えるでしょう。

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