山本康夫

山本 康夫について

山本康夫（やまもとやすお、1902年10月27日 - 1983年5月30日）は、日本の短歌界において重要な役割を果たした歌人であり、広島を活動の中心に据えました。1930年からは短歌結社「真樹」の主宰を務め、その活動を通じて歌人としての名声を築いていきました。彼は、日本歌人クラブ中国地区の幹事や広島県歌人クラブの会長も歴任し、地域の歌人たちと共に短歌の文化を発展させることに尽力しました。1981年度には、短歌活動に対する功績が認められ、広島文化賞を授与されました。彼の短歌に対する理念は「内面客観」であり、個々の感情と経験を深く掘り下げることに価値を置いていました。

略歴

山本は長崎県北高来郡小栗村（現在の諫早市小栗）に生まれ、1917年頃には短歌雑誌「アララギ」に参加しました。1924年には帝国通信社に入社し、同時期に尾上柴舟のもとで短歌を学び始めます。1928年には第一歌集『萱原』を発表し、同年には田中紀代子と結婚しました。

その後、短歌活動の中で山本は広島に移り、1930年に月刊の歌誌『処女林』を創刊、その後1932年に『新樹』、さらに改題して『真樹』という名で現在まで続く歌誌を定期的に発行しました。

1945年8月6日、広島での原爆投下に遭遇し、彼は深い悲しみの中で長男を失いました。この経験は、彼の後の創作に大きな影響を与え、被爆の半年後には「幻」という小文にその苦しみを描いています。彼が詠んだ被爆に関する短歌は、1998年に編纂された『閃光 : 原爆歌集』に収められています。

戦後、山本は児童雑誌『ぎんのすず』に執筆し、また1946年には中国新聞社が募集した「歌謡ひろしま」の歌詞に参加し、妻の名義で入選しましたが、この歌は長らく忘れ去られていました。

1950年には広島原爆記念会が企画した原爆焼に彼の作詞が使われ、その存在は2016年に再発見されました。1957年に中国新聞社を定年退職した後も、山本は短歌結社「真樹」を主宰し続けました。妻の紀代子が1961年に亡くなると、彼は原田節子と再婚し、彼女も後に短歌作品を発表します。1983年、彼は80歳で逝去しました。

著書

山本康夫は短歌集を多数著しており、その中には『萱原』をはじめとする数多くの作品が含まれています。彼の歌集は、長年にわたり彼の歌の独自性を示す重要な資料となっています。その他にも、短歌の理論や短歌についての論考をまとめた著書も残しており、短歌界における彼の影響は計り知れません。

詩のスタイルと貢献

彼の短歌は、感情を内面から深く探求し、客観的な視点で捉えることによって生み出されています。この「内面客観」のアプローチは、彼の詩作において非常に重要な位置を占めていました。彼の作品は、多くの人々に共感を呼び起こし、短歌の未来に大きな影響を与えました。

山本康夫の短歌に対する情熱と創意は、今もなお後世に影響を与え続けています。彼の功績は、短歌文化の礎を築いた人物として、多くの歌人たちにその名が語り継がれています。

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