山河ノスタルジア

山河ノスタルジア：25年にわたる人生の物語

ジャ・ジャンクー監督が放つ『山河ノスタルジア』（原題：山河故人）は、中国、フランス、日本の合作により2015年に制作された感動作です。中国とオーストラリアを舞台に、1999年から2025年までの25年間にわたる、3人の主人公の人生が繊細に描かれています。カンヌ国際映画祭にも出品された本作は、2016年のキネマ旬報外国映画ベストテンで5位にランクインするなど、高い評価を獲得しました。

1999年、山西省汾陽：運命の出会い

物語は、1999年の中国、山西省汾陽で幕を開けます。家電店で働くタオは、炭鉱で働く内気なリャンズー、そして自信に満ちた実業家ジンシェンという二人の幼なじみから好意を寄せられます。やがて、タオはジンシェンと結婚し、息子ダオラーをもうけます。この最初の章では、3人の若者たちの複雑な人間関係、そして中国の急速な経済発展が背景として静かに描かれます。

2014年、汾陽：別れと喪失

時は流れ、2014年。タオはジンシェンと離婚し、一人汾陽で暮らしています。そんなある日、突然、父親が亡くなります。葬儀に参列するため、オーストラリアに移住していた息子ダオラーと再会したタオは、彼とジンシェンがオーストラリアで一緒に暮らしていることを知ります。この再会は、母子の関係、そして過去との決別を象徴する出来事として描かれています。

2025年、オーストラリア：アイデンティティの探求

物語は、2025年のオーストラリアへと移ります。19歳になったダオラーは、長年の海外生活により中国語を話すことができなくなっています。父親との確執、そして自らのアイデンティティの喪失に苦しむダオラーですが、中国語教師のミアとの出会いが、彼の運命を大きく変えます。ミアとの交流を通して、ダオラーはかすかに記憶に残る母親の面影を探り始めます。この最終章は、アイデンティティ、故郷への郷愁、そして世代間の葛藤といった普遍的なテーマを深く掘り下げています。

巧みな演出と俳優陣

ジャ・ジャンクー監督の繊細な演出と、チャオ・タオ、リャン・チントン、チャン・イー、ドン・ズージェン、シルヴィア・チャンら実力派俳優陣の熱演により、登場人物たちの感情や心の動きがリアルに表現されています。美しい映像と、中国の急速な発展と社会の変化が織りなす複雑な背景は、観る者の心を深く揺さぶります。

時間と記憶、そして変化

『山河ノスタルジア』は、単なる恋愛物語や家族ドラマではありません。時間と記憶、そして社会の変化といった普遍的なテーマを、巧みに織り交ぜた、奥行きのある物語です。中国の急速な発展と、それによって引き裂かれた人々の心の傷、そして失われた故郷への郷愁が、美しい映像と静かな音楽によって描かれています。

記憶に残る傑作

『山河ノスタルジア』は、中国の近現代史、そして人々の心の変化を映し出す鏡と言えるでしょう。25年という長い時間と、複雑に絡み合う人間関係、そして失われた故郷への想いが、観る者の心に深く刻まれる、忘れがたい傑作です。

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