山田和夫

山田 和夫の生涯と業績

山田和夫（やまだ かずお、1928年1月28日 - 2012年8月11日）は、日本を代表する映画評論家であり、映画史家、さらには映画運動家として広く知られています。彼は日本の映画文化の発展に多大な貢献をし、その姿勢や思想は多くの映画人やファンに影響を与えました。

来歴と教育

山田は大阪府大阪市に生まれ、高知高等学校を卒業後、東京大学の経済学部に進学しました。在学中には堤清二や富本壮吉などと自由映画研究会を設立し、情熱的な映画批評の基盤を築きました。1951年には映画専門の業界紙、合同通信社に入社し、記者としてのキャリアをスタートさせました。1962年からはフリーとして活動し、自らの意見を自由に発信する道を選びました。

映画運動と国際的な活動

山田は特にエイゼンシュテイン・シネクラブ（日本）の代表を務め、『戦艦ポチョムキン』の自主上映運動でその名を知られるようになりました。彼の活動は日本だけにとどまらず、国際シネマ・ライブラリーを通じて、ロシア・ソビエト連邦やラテンアメリカ、越南の映画を日本で紹介するなど、精力的に国際的交流を進めました。

また、モスクワ国際映画祭やハバナ国際映画祭に参加することで、これらの地域の映画文化の理解を深め、それを日本の観客に伝える役割を果たしました。山田はベトナム社会主義共和国から友好勲章、キューバ共和国から文化功労章を受けるなど、国際的な評価も得ています。彼の評論は映画の芸術的な側面だけでなく、産業的な側面にも配慮されており、映画業界紙の記者としての経験も生かして、幅広い視点を提供しました。

政治活動と社会運動

山田は1954年に日本共産党に入党し、映画後援会の代表を務めるなど、政治にも積極的に関与していました。特に、「しんぶん赤旗」に頻繁に寄稿したことや「九条の会」の一員として活動していたことから、彼の思想は単に映画に留まらない広がりを見せました。また、映画復興に向けた活動を行う日本映画復興会議の代表委員としても尽力し、映画の社会的な役割を重視しました。

一方で、戦争を肯定的に描いた作品への痛烈な批判も行っており、特に『プライド 運命の瞬間』や『ムルデカ17805』に対して厳しい見解を示しました。彼のこうした姿勢は、映画が持つ重要性を認識し、その誤った方向への流れに警鐘を鳴らすものでした。

主な著作と業績

山田の貢献は文献にも表れています。彼の著書には、映画に関する幅広いテーマを扱ったものが多く存在します。たとえば、映画批評の集大成とも言える「エイゼンシュテイン―生涯とその思想」や、映画に対する彼の深い理解を示す「映画100年―映画が時代を語るとき」などがあります。

彼の著作は、映画の研究だけでなく、映画を通じて社会や文化を理解するための貴重な資料となっています。特に、エイゼンシュテインやロシア・ソビエト映画の研究においては、後の映画評論家たちにも多くの影響を与えています。

最後の年と影響

山田は2012年8月11日に肺炎のため亡くなりました。彼の死は、日本映画界にとって大きな損失でありましたが、彼が残した業績や思想は今なお映画界で語り継がれています。山田和夫の功績は、映画批評の業界において今後も重要な指針であり続けるでしょう。

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