戦艦ポチョムキン

『戦艦ポチョムキン』

『戦艦ポチョムキン』は、1925年に公開されたソビエト連邦のサイレント映画であり、映画史の中でも重要な位置を占める作品です。監督はセルゲイ・エイゼンシュテインで、彼の長編第2作です。この映画は、第一次ロシア革命の20周年を記念して制作され、1905年に実際に起こった戦艦ポチョムキンの反乱を題材としています。

作品の中で最も印象に残るシーンが、「オデッサの階段」と称される約6分間の場面です。このシーンは、オデッサ市民に対する虐殺の情景を描いており、特に撃たれた母親が離れた乳母車が階段を転がり落ちるシーンは、のちに他の多くの作品にオマージュされるほど有名になりました。ただし、この事件自体が史実とは異なる点も多く、多くの映画ファンにとって物議を醸す部分でもあります。

エイゼンシュテイン監督は、モンタージュ理論の提唱者としても知られ、本作では「アトラクションのモンタージュ」と呼ばれる編集手法を用いています。この手法は、視覚と感情を融合させることを目的とし、観客に強い印象を与える役割を果たしました。その結果、この作品は国際的にも大きな反響を呼び、のちの映画製作に多大な影響を及ぼしました。

製作過程としては、エイゼンシュテインの前作『ストライキ』が高く評価されたことから、ロシア第一革命20周年記念の映画制作を依頼されたことが始まりです。最初の脚本は革命の全体を描くものでしたが、公開日が迫る中で、戦艦ポチョムキンの反乱に焦点を当てた形に変更されました。また、出演者の多くは素人であり、艦隊の水兵やオデッサ市民が未経験ながら演技をしています。

映画は1925年の12月24日にモスクワのボリショイ劇場で初めて上映され、大きな好評を得ました。しかし海外では、共産主義的な内容が原因で検閲され、上映禁止となることも多々ありました。日本においては、終戦後22年が経過して1967年にやっと一般公開が実現しました。

本作のフィルムはその後の政治的理由からカットされ、完全なオリジナル版は散逸してしまいましたが、1976年にポジ・プリントから復元版が制作されました。この復元版ではショスタコーヴィチの音楽が用いられていますが、後にエドムント・マイゼルによる音楽も復元され、様々な版が存在することが特徴です。

影響力のあるこの映画は、時代を超えて多くの映画や作品に引用されており、映画史にその名を刻んでいます。映画批評家によるランキングでも常に上位に位置し、映画芸術に革命をもたらした作品としてその評価は揺るぎがありません。『戦艦ポチョムキン』は、映画制作に興味がある人々にとって必見の名作であり、その歴史的背景や技術的な革新について学ぶ良い機会を提供してくれます。

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