山田文雄 (動物学者)

山田 文雄（やまだ ふみお）

日本の哺乳類学者。

人物とキャリア

1953年、滋賀県に生まれる。九州大学大学院農学研究科にて学び、1981年に博士課程の単位を取得して退学。その後、独立行政法人森林総合研究所に勤務し、哺乳類の生態に関する研究に従事した。1990年には「ニホンノウサギ(Lepus brachyurus)の生態,特にヒノキ造林木への食害とその防止に関する研究」と題する論文で九州大学より農学博士の学位を授与された。この研究は、ニホンノウサギの生態を詳細に分析し、特に森林被害との関連性に着目したものであり、その後の野生動物管理に関する研究の基礎となる業績の一つである。

山田氏は学会活動においても中心的な役割を果たしてきた。1991年には森林野生動物研究会（前身は野兎研究会）の常任理事に就任し、以来長きにわたり学会の運営に関わっている。また、日本哺乳類学会においても、理事や監事といった要職を歴任したほか、学会和文誌である「哺乳類科学」の編集委員長や、哺乳類保護管理専門委員長としても活動し、日本の哺乳類研究およびその保護管理の発展に大きく貢献している。

研究活動

山田氏の研究分野は、主に哺乳類の保全生物学、特に外来生物の問題に焦点を当てている。侵略的な外来中型哺乳類の効果的かつ効率的な防除技術の開発に関する研究など、生態系保全に直結する実践的な研究を推進してきた。外来哺乳類が日本の生態系に与える影響を評価し、その対策を講じるための科学的根拠を提供することは、生物多様性の保全にとって極めて重要であり、氏の研究はその分野において指導的な立場にある。

主要な著作

山田氏は研究成果を論文として多数発表しているほか、一般向けの解説書や専門書も執筆・編集している。特に以下の著書は、日本の哺乳類学、特に外来生物問題やウサギの生態に関する知見をまとめた重要な出版物である。

『日本の外来哺乳類：管理戦略と生態系保全』 (東京大学出版会、2011年) - 池田透氏、小倉剛氏との共同編著。日本の外来哺乳類が引き起こす諸問題について網羅的に解説し、その管理や生態系保全のための戦略を論じた専門書であり、この分野の研究者や行政担当者にとって不可欠な参考書となっている。
『ウサギ学：隠ることと逃げることの生物学』 (東京大学出版会、2017年) - ウサギ類の多様な生態や行動について、自身の研究成果を含めて体系的に解説した単著。隠れることや逃げることといった生存戦略に焦点を当て、ウサギという身近な動物の奥深い世界を紹介している。

このほかにも多数の論文を発表しており、国立情報学研究所のデータベースなどでもその業績を確認することができる。

近年の活動と受賞

近年の活動としては、2020年に沖縄大学地域研究所の特別研究員となり、2021年には同大学の客員教授に就任し、教育・研究活動に従事した。また、2024年には滋賀県立大学の非常勤講師も務めている。地域社会と連携した研究や教育にも力を入れている姿勢がうかがえる。

その長年にわたる哺乳類学への貢献が認められ、2021年度には日本哺乳類学会特別賞を受賞した。これは、ウサギ類の生態研究や外来哺乳類の管理に関する研究、そして学会活動への貢献が高く評価されたものである。

さらに2024年には、奄美大島の大和村に開設されたアマミノクロウサギミュージアムQuruGuruの名誉館長に就任した。特別天然記念物であるアマミノクロウサギの保全や啓発活動にも深く関わっており、その専門知識と経験を地域固有の希少種の保護に活かしている。

山田文雄氏は、日本の哺乳類研究、特に保全と管理の分野における第一人者として、研究、教育、社会活動の多方面で活躍を続けている。

関連項目

日本哺乳類学会

外部リンク

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