山田正男

山田正男：東京の都市計画を牽引した人物

山田正男（1913年8月1日 - 1995年）は、日本の都市計画家、土木技術者です。彼は、1930年代から1970年代にかけて、東京都の道路計画策定に深く関与しました。特に戦後の首都高速道路や東京外環自動車道の立案・設計における貢献は大きく、その影響力から「山田天皇」とも呼ばれるほどでした。東京都建設局長、東京都首都整備局長、首都高速道路公団理事長などの要職を歴任し、今日の東京の自動車専用道路網の基礎を築いた人物として、都市計画史上重要な人物とされています。

生涯と業績

1937年、東京帝国大学工学部土木工学科を卒業後、内務省都市計画東京地方委員会に勤務し、都市計画のキャリアをスタートさせました。当時、上司であった石川栄耀から大きな影響を受けました。山田は、東京の交通の主役が鉄道から自動車へ移行すると予測し、都市内交通の爆発と道路の麻痺を危惧していました。

1938年、「東京高速度道路網計画」の策定に参画。この計画では、4環状7放射の高速道路網を提唱しました。特に内側の3環状線は、現在の内環状線、中央環状線、外郭環状線と類似したルートを辿り、外側の環状線は現在の国道16号に相当します。また、高架高速道路の下に事務所や店舗を配置する構想は、後の東京高速道路株式会社線の計画へと繋がりました。

1940年代には、内務省国土局や計画課に所属し、1947年の長野県飯田市で発生した飯田大火の復興計画にも関与しました。1950年には神奈川県都市計画課長として箱根山戦争の調停に尽力し、1955年12月には東京都建設局都市計画部長に就任しました。1950年代を通じて、首都高速道路の設計基準や交通計画策定に尽力しました。上司であった石川栄耀の理想主義とは異なり、山田は現実主義を貫き、道路建設を進めました。

1958年に首都高速道路計画が議決され、1959年には東京オリンピックの開催が決定。羽田空港からオリンピック会場である代々木を結ぶ1号線と4号線の建設を主導しました。回顧録では、4車線の高速道路建設について、都市計画道路の幅員制限や財政的な制約があったことを述べています。また、1957年には外環自動車道の必要性を提唱し、1964年の外環都市計画決定の先駆けとなりました。これらの功績により、1967年には日本都市計画学会石川賞を受賞しました。

1961年、首都高速道路公団副理事に就任、1971年には理事長として退任しました。没後、所蔵していた蔵書・資料は「山田文庫」として東京都都市づくり公社まちづくり支援センターで保管されています。

首都高速道路と東京オリンピック

首都高速道路と東京オリンピックに関連して、「オリンピック開催までの短い期間で、用地買収が困難な状況の中、都市計画部長であった山田正男が、道路の上に高架橋を建設する『空中作戦』を提案し、建設を成功させた」というエピソードが語られることがあります。しかし、山田自身はオリンピックのために道路を建設したという認識はなく、あくまで当然の事業として取り組んだと述べています。また、部下であった鈴木信太郎も、オリンピックが決定する前から計画は進行していたと証言しています。

実際に、首都高速道路の基本方針は1957年に建設省によって定められ、現在のルート原型は1957年11月には東京都都市計画高速道路調査特別委員会によって策定されています。また、1959年2月には日本道路公団が、首都高速道路2号線の一部を着工しており、これらはすべて1959年5月の東京オリンピック開催決定より前の出来事です。山田の著書に「空中作戦」という言葉は登場しません。この言葉は、後にプロジェクトXというテレビ番組で使われたものとされています。

著書

「東京都市計画高速道路計画」1960年
「変革期の都市計画―現代経済社会における土地計画上の諸問題」1974年
「時の流れ・都市の流れ」1973年
対談集「明日は今日より豊かか　都市よどこへ行く」1980年
「東京の都市計画に携わって : 元東京都首都整備局長・山田正男氏に聞く 」東京都新都市建設公社まちづくり支援センター　2001年

脚注

参考文献

「東京の都市計画に携わって－－元東京都首都圏整備局長・山田正男氏に聞く－－」（財）東京都新都市建設公社まちづくり支援センター 2001年
* 堀江興「東京の高速道路計画の成立経緯」、土木計画学研究・講演集 1995年12月
(http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/1995/18-2-0001.pdf)

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