山田美妙

山田美妙：言文一致の先駆者、その生涯と業績

山田美妙（1868年8月25日 - 1910年10月24日）は、明治時代に活躍した小説家、詩人、評論家、そして辞書編纂者です。本名は山田武太郎。彼は、言文一致体と新体[[詩]]運動の先駆者として、日本の近代文学に大きな足跡を残しました。

生い立ちと初期の活動

美妙は、江戸の神田柳町（現在の東京都千代田区神田須田町）に、旧南部藩士の家に生まれました。幼少期は祖母の厳しい教育を受け、それが後の彼の性格形成に影響を与えたとされています。1874年に私立烏森学校に入学し、そこで生涯の友人となる尾崎紅葉と出会います。その後、東京府中学を経て大学予備門に進学。文学への関心を深め、1885年に尾崎紅葉らと文学結社「硯友社」を結成し、雑誌『我楽多文庫』を編集・刊行しました。

言文一致運動と文壇での活躍

『我楽多文庫』に発表した「嘲戒小説天狗」は、言文一致体で書かれた先駆的な小説として注目を集めました。また、新体[[詩]]にも意欲的に取り組み、『新体詞選』を刊行するなど、新たな文学の潮流を牽引しました。1887年には読売新聞に「武蔵野」を連載し、これは最初の言文一致体の新聞小説となりました。同年には婦人雑誌『以良都女』を創刊するなど、その活動は多岐にわたりました。

しかし、1890年代に入ると、私生活での問題が表面化し、文壇からの批判を浴びるようになります。スキャンダル報道や坪内逍遥からの批判を受け、文壇での地位を失い、経済的にも困窮する時期を過ごしました。

思想的活動と晩年

1897年頃から、山県悌三郎らと交流を深め、「東洋青年会」の活動に参加するようになります。フィリピン独立運動に共鳴し、独立運動家アギナルドの伝記を執筆するなど、思想的な活動も展開しました。また、王子義塾を開き、教育活動にも従事しました。

晩年は、辞書編纂に力を注ぎ、『大辞典』を刊行するなど、国語研究にも貢献しました。しかし、病に倒れ、1910年10月24日に42歳という若さで死去。晩年は、病と貧困に苦しみ、寂しいものだったと言われています。

業績と評価

山田美妙は、言文一致体の先駆者として、日本の近代文学の発展に大きく貢献しました。彼の作品は、悲劇的情緒や主情的心理描写を取り入れた独特のスタイルが特徴であり、後世の作家たちに大きな影響を与えました。

また、国語辞典編纂者としても、『日本大辞書』や『大辞典』など、多くの辞典を手がけ、日本語の近代化に貢献しました。特に『日本大辞書』は、語釈が口語体で書かれた最初の辞典として、画期的なものでした。

しかし、スキャンダルや文壇からの批判など、波乱に満ちた人生を送ったため、その業績は必ずしも正当に評価されているとは言えません。近年、再評価の動きが進んでおり、彼の文学的、思想的な意義が改めて見直されています。

主な著作

『新体詞選』(1886年)
『夏木立』(1888年)
『武蔵野』(1887年)
『胡蝶』(1889年)
『比律賓独立戦話 あぎなるど』(1902年)
『大辞典』(1911年)

山田美妙は、日本の近代文学黎明期において、革新的な試みを行い、新たな文学の可能性を切り拓いた重要な作家の一人です。その功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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