山田辰雄 (空手家)

山田辰雄の生涯と業績

1. 生い立ちと初期の修行

空手界の重要な人物である山田辰雄は、1905年に兵庫県明石市で生まれました。少年時代から武道に興味を持ち、まずは柔術を竹内佐一から学びました。この柔術の修行が彼の武道への道を開くきっかけとなりました。特に1924年、山田は唐手（現・空手）の巨匠である本部朝基が設立した唐手術普及会に入門し、さらに1926年には本部の助教師にまで昇進しました。彼の才能は早くから認められ、空手道における地位を確立していくのです。

2. 要人警護と空手への情熱

1933年には、商工大臣中島知久平の警護に従事する職に就き、武道の実践を通じて多くの経験を積みました。要人警護という職務は彼の体力と精神力をさらに引き上げ、戦後もその経験を生かしていくことになります。

3. 戦後の活動と道場設立

終戦後の1945年、山田は日本大学歯学科の空手部で指導を始め、1947年には理工学部でも空手の師範を務めました。さらに同年に東京の荻窪に整骨院を開き、その隣に道場も設立しました。これを皮切りに、彼は自身のスタイルで空手を広める活動に邁進します。

1955年頃、山田は東京飯田橋に日本拳法空手道の道場を開設し、多くの弟子に空手を教えました。1958年には、『月刊空手道』に「武道からてと護身術」という論文を寄稿し、空手の実戦性についての考察を深めました。

4. グローブ着用の空手の考案

1959年、山田はグローブを着用する直接打撃制の空手競技を考案しました。これが後のフルコンタクト空手やキックボクシングの基礎を築くこととなります。1962年には後楽園ジムナジアムで第一回の空手試合を主催し、多くの注目を集めました。この試合は、彼が考案した方式がどれほど革新的であったかを示すものでした。

また、同年、NHKテレビに出演して自ら考案したグローブ空手を披露し、そのアイデアは全国に広まります。これにより、彼の名声は確立され、空手界に新たな風を吹き込むこととなります。

5. タイのムエタイとの関わり

山田はタイのムエタイにも関心を示し、日本のキックボクシングの成立にも寄与しました。異なる武道の要素を融合させる姿勢は、彼の空手への情熱を物語っています。

6. 最後の時

1968年に肝臓ガンにより62歳で亡くなった山田辰雄は、空手の実戦性とその広がりに生涯をかけた人物でした。彼の業績は空手の進化に大きな影響を与え、現在も多くの武道家に影響を与え続けています。山田の遺した教えは、空手界だけでなく、武道全般にとっての重要な財産となったのです。

もう一度検索