山陰・坪谷村一揆

山陰・坪谷村一揆とは

山陰・坪谷村一揆は、江戸時代の元禄3年（1690年）に日向国臼杵郡の山陰村、坪谷村（現在の宮崎県日向市東郷町山陰、坪谷）で発生した農民による逃散を伴う一揆です。山陰一揆、山陰騒動とも呼ばれています。

一揆の背景

延岡藩領内であった山陰村と坪谷村では、数年にわたる大雨と洪水により農作物が不作となっていました。しかし、藩からの厳しい年貢の取り立ては変わらず、困窮した農民たちは生活の糧を求めて逃散を決意しました。

元禄3年9月19日、300戸1422名の農民たちは、わずかな武器と牛馬、家財を携え、隣接する高鍋藩への逃散を試みました。

一揆の経過

農民たちは当初、薩摩藩を目指していましたが、途中の股猪野（現在の都農町又猪野）で高鍋藩に止められ、高鍋藩内に留まることとなりました。延岡藩からの説得にも応じず、元禄4年正月には高鍋藩の立ち会いのもと、再度延岡藩との交渉が行われましたが、決裂。事態は幕府の裁定を仰ぐことへと発展し、江戸の評定所へ訴え出るという異例の展開を見せました。

同年2月、延岡藩からは郡代の梶田十郎左衞門と代官の大崎久左衞門が、農民側からは代表21名が江戸へ呼び出されました。高鍋藩は、道中の護衛として武士百数十名を派遣し、食糧の支給や仮住まいの提供、医師の派遣など、農民たちへの手厚い支援を行いました。ちなみに、この時高鍋藩が支給した食糧は、後に延岡藩から返済されています。

幕府の裁定と結末

同年6月23日、幕府は農民側に非があるとして、延岡藩への帰還を命じました。同時に、延岡藩の郡代と代官を追放するという裁定を下しました。農民側の首謀者2名は磔、5名は斬首刑、7名は八丈島への流罪となり、首謀者の家族も処罰されるという厳しいものでした。この裁定を受け、7月4日には延岡藩と高鍋藩が農民178名を説得し、7月14日、農民たちは延岡藩へと帰還しました。

一揆の影響

同年11月8日、江戸幕府は一連の騒動の責任を問い、延岡藩主の有馬清純に糸魚川藩への転封を命じました。山陰村と坪谷村は天領となり、幕府の直轄地として管理されることとなりました。一方、農民たちは高鍋藩からの支援に深く感謝し、廃藩置県後には高鍋へ移住する者もいたと言われています。

一揆から120年後の文化8年（1811年）には、犠牲者たちの供養塔が成願寺に建立され、その霊を慰めています。

参考資料

石川恒太郎　『延岡市史』　国書刊行会、1981年
高鍋町史編さん委員会編　『高鍋町史』　高鍋町、1987年
* 安田尚義　『高鍋藩史話』　高鍋町長神代勝忠、1968年

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