山颪 (妖怪)

山颪：おろし金のような頭を持つ妖怪

鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』に登場する山颪(やまおろし)は、特異な姿で知られる日本の妖怪です。その姿は、おろし金のような無数の突起が頭部一面に並んだ人型と表現されています。石燕自身による解説文では、全身に針を持つヤマアラシ（豪猪）の異名である「山おやじ」と「山おろし」の語感の類似性に着目し、山颪の頭部の突起をヤマアラシの針になぞらえています。

絵図には、大根や貝杓子、すり鉢といった台所用品が描かれており、山颪の生息空間や活動内容を示唆しているとも考えられます。これらの道具は、山颪の頭部にあるおろし金状の突起と関連付けられ、山颪が台所で活動する妖怪であることを示唆しているのかもしれません。

山颪の創作の経緯については諸説あります。室町時代の『百鬼夜行絵巻』に描かれる、浅沓を載せたヤマアラシ状の妖怪がヒントになったという説や、既に存在したトゲの生えた妖怪をモデルとして創作されたという説も存在します。これらの説は、山颪の奇怪な姿と、ヤマアラシとの関連性の深さを示しています。

近年の[妖怪]]研究では、山颪に対する新たな解釈も登場しています。おろし器という調理器具を擬人化した付喪神]であるという説や、颪（おろし）という吹き下ろす風を司る[[妖怪という説が挙げられます。前者の説は、山颪の頭部が調理器具であるおろし金に似ていること、そして絵図に台所用品が描かれていることを根拠としています。後者の説は、名前の由来である「颪」に着目し、風を起こす妖怪という解釈をしています。

このように、山颪は、その奇怪な姿と、ヤマアラシとの関連性、そして様々な解釈によって、多様な魅力を持つ妖怪となっています。おろし金のような頭部、台所用品との関連、ヤマアラシとの類似性、そして付喪神や風の妖怪といった解釈。これらの要素が絡み合い、山颪は、日本の妖怪の中でも特に謎めいた存在として、人々の興味を引きつけています。

山颪の謎は、未だ解明されていない部分も多く残されています。しかし、その奇怪な姿と、様々な解釈の可能性は、研究者や妖怪ファンにとって、魅力的な研究対象であり続けていると言えるでしょう。今後の研究によって、新たな解釈や事実が明らかになる可能性も十分にあり、山颪はこれからも人々の想像力を刺激し続ける存在であり続けることでしょう。

関連事項

沓頬(くつぼほ): 『百器徒然袋』に描かれる、沓(くつ)の妖怪。ヤマアラシ状の妖怪も描かれている点で、山颪との関連性が指摘されています。
山あらし: 妖怪絵巻などに描かれる妖怪。山颪との関連性が指摘されていますが、詳細は不明です。それぞれの妖怪の特徴を比較検討することで、山颪の理解が深まる可能性があります。

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