山鹿貝塚

山鹿貝塚：縄文時代の装飾文化を今に伝える史跡

福岡県遠賀郡芦屋町山鹿に位置する山鹿貝塚は、縄文時代早期から晩期にかけての長い期間にわたって営まれた貝塚です。1953年の発見以来、五次にわたる発掘調査が行われ、縄文時代の生活や文化を知る上で重要な手がかりを提供しています。福岡県の指定史跡として、その価値が認められています。

6000年の時を刻む貝塚

発掘された縄文土器の分析から、山鹿貝塚で縄文人が活動していたのは、縄文早期から晩期にかけての約6000年間であることが判明しました。この長期にわたる営みは、当時の人々の生活が安定していたことを示唆しています。

埋葬人骨が語る縄文人の精神世界

これまでの調査で、20体以上の埋葬人骨が出土しており、その埋葬時期はいずれもおよそ3500年前と推定されています。特筆すべきは、これらの人骨が貝輪や骨角器、勾玉といった装身具を伴う頻度が、他の遺跡と比較して非常に高いことです。この事実は、装身具が単なる装飾品ではなく、身分や役割を示す重要な意味を持っていた可能性を示唆しています。また、アクセサリーの付け方と性との関係を考える上で重要な情報源となります。

さらに、埋葬人骨の胸骨の一部などが意図的に抜き取られている事例も見られます。これは、何らかの呪術的な意味があったと考えられ、当時の人々の精神世界を垣間見ることができます。

出土品から読み解く縄文社会

山鹿貝塚からは、縄文時代中後期の西日本でよく見られる磨滑縄文土器が多数出土しています。これらの土器は、当時の食生活や調理方法を知る上で貴重な資料となります。

特に注目されるのは、1968年の第三次調査で発掘された女性人骨です。この人骨は、サメの歯のイヤリング2個、緑色大珠1個、貝（タマキガイ）の腕輪19個を身に着け、鹿角2本を添えて葬られていました。このことから、発掘報告者は、大珠を持った女性は呪術師兼女族長であったと推測しています。他の女性も全員貝の腕輪をはめ、耳飾りや足飾りをつけている人もいました。このように、縄文人の女性が装身具を多数身に着けて埋葬された事例は全国でも数少なく、当時の社会構造や女性の地位について新たな視点を提供しています。

縄文時代の装飾文化研究における重要性

山鹿貝塚は、縄文時代の装飾文化や社会構造を研究する上で非常に重要な遺跡です。出土した装身具の種類や数、埋葬方法などから、当時の人々の精神世界や社会組織について深く考察することができます。今後の研究によって、さらに多くの謎が解き明かされることが期待されます。

関連情報

縄文時代の遺跡一覧
日本の貝塚一覧

もう一度検索