胸骨

胸骨 (Sternum)

胸骨は、胸郭の前面にあり、中心に位置する扁平な骨で、人間を含む多くの脊椎動物に存在します。胸骨は大きく分けて3つの部分から成り立っています。最上部には胸骨柄があり、その下には胸骨体が続き、下端には剣状突起が位置しています。胸骨は体の重要な構造部位であり、周囲の肋骨とも密接に結びつき、胸部の安定性を保っています。

造血機能

胸骨は成人において、骨髄を豊富に含む部位であり、腸骨に次いで多くの血液を生産しています。血液の20%から30%が胸骨内で生成されているとされています。この造血機能は、体内の血液供給を維持し、さまざまな生理的役割を果たす上で不可欠です。

胸骨骨折

胸骨骨折は、胸郭骨折の一種であり、主に外部からの直接的な衝撃によって引き起こされます。交通事故において、運転者がハンドルで胸部を強く打つことで発生することが多く、骨折が胸骨柄や胸骨体の境界に集中することが多いです。症状としては、痛みや局所的な圧痛、腫れ、さらに縦隔症状が現れることがあります。治療に関しては、胸郭内部の内臓損傷がない場合には、絆創膏やバストバンドでの固定が3〜4週間行われますが、骨がずれた場合や呼吸・循環に影響がある場合には手術が検討されます。

動物における胸骨の役割

動物において、胸骨は前肢の基礎を形成する重要な骨です。肩帯との結合により、前肢が体幹とつながります。胸骨の形状や大きさは、動物の運動能力に大きく関与しており、特に前肢を多く使う動物は、相対的に胸骨が大きく発達する傾向があります。四肢動物の中でも、有羊膜類では胸骨が一般的に見られ、陸上での生活を送る中でそれぞれ進化しています。

爬虫類に関しても、胸骨には多様な形が存在します。ヘビのように胸骨がなく、肋骨が靭帯で結合されている場合や、トカゲのように頑丈な軟骨の胸骨を持つ場合があり、その形状や機能は動物の生活様式に応じて異なることがわかります。ワニは、胸骨を持ち、前肢帯との結合が特に重要です。

絶滅した生物群でも胸骨は確認されており、特に翼竜など飛翔能力を持つ種では、胸骨が特に発達しています。恐竜の段階ではまだ胸骨は未発達でしたが、鳥類では胸骨の竜骨突起が発展し、進化の過程で翼竜との類似性を示しています。

哺乳類における胸骨

哺乳類では、胸骨は一連の胸骨片で構成され、その幅は比較的狭いです。最下部の胸骨片は剣状突起を持っており、構造上は軟骨または置換骨から成り立っています。クジラのような海棲哺乳類では、胸骨片同士が融合し、全体的に小型の胸骨が形成されていますが、陸棲哺乳類に比べると肋骨の数は少なくなっています。

このように、胸骨は多様な生物において重要な役割を果たしており、その構造や機能は各種の生活環境や運動スタイルに適応しています。

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