岐部一誠

岐部 一誠

1961年4月25日、長崎県に生まれた岐部 一誠氏は、日本の実業家であり、長年にわたり土木技術者としての経験を積んだ人物です。現在は、総合インフラサービス企業グループであるインフロニア・ホールディングスの取締役および代表執行役社長兼CEOを務めています。

キャリアの始まり

岐部氏は1986年に熊本大学工学部土木工学科を卒業後、同年4月に準大手ゼネコンである前田建設工業株式会社に入社しました。キャリアの初期段階では、建設現場における施工管理業務に約10年間従事し、下水ポンプ処理場建設といった具体的なプロジェクトを通じて、土木技術者としての基礎を固めました。現場での実務経験を積んだ後、2年間は営業部門で経験を重ね、幅広い視点から建設事業に携わりました。

経営の中枢へ

1998年からは、会社の経営戦略を担う経営企画部門へと活躍の場を移します。当時社長を務めていた前田靖治氏の側近として、経営の根幹に関わる重要な役割を果たしました。その手腕が認められ、2010年1月には執行役員（経営企画担当）兼土木事業本部副本部長に就任。これを皮切りに、会社の要職を次々と歴任していきます。常務執行役員、事業戦略本部長などを経て、2016年6月には取締役に就任し、経営の一角を担うことになります。

さらに、2020年4月には専務執行役員兼経営革新本部長として、組織の改革を推進する立場に。同年6月にはCSR（企業の社会的責任）および環境担当を兼務し、持続可能な社会に向けた取り組みにも注力します。2021年5月にはCSV（共通価値の創造）戦略担当、技術・情報統括といった新たな分野を統括するなど、その担当領域は多岐にわたりました。同年10月には代表取締役副社長情報担当に昇進し、経営における重要なポジションを確立します。

建設業界の未来を見据えて「脱請負」を提唱

長年のキャリアを通じて建設業界の構造を熟知していた岐部氏は、業界に長く根付いたビジネスモデルからの変革が必要だと強く認識していました。そこで彼が掲げたのが「脱請負」という理念です。これは、単に工事を請け負うだけでなく、事業全体の企画・開発から運営・維持管理まで、より広範な領域で付加価値を提供するビジネスモデルへの転換を目指すものです。この理念は、建設業界が抱える課題に対し、新たな視点から解決策を提示する画期的なものでした。

インフロニア・ホールディングスの設立を主導

「脱請負」を実現し、グループ全体の競争力を強化するため、岐部氏は持株会社体制への移行を主導しました。これにより、前田建設工業を中核としつつ、前田道路、前田製作所といった各事業会社を傘下に置くインフロニア・ホールディングスが設立される運びとなります。これは、グループが一体となって多角的なインフラサービスを提供するための戦略的な再編でした。

そして、インフロニア・ホールディングスが設立された2021年10月1日、岐部氏は同社の取締役および代表執行役社長兼CEOという、グループ全体の最高経営責任者に就任しました。前田建設工業での豊富な経験と、「脱請負」という明確なビジョン、そしてそれを実現するための組織再編を成し遂げたリーダーシップにより、新たなインフラサービス企業グループの舵取りを任されています。彼のこれまでのキャリアは、土木技術者としての現場経験から始まり、経営企画、事業戦略、技術統括、そしてグループ全体の経営トップへと至る、建設業界における構造変革を体現した道のりと言えるでしょう。

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