岡島常樹

岡島八十右衛門常樹：赤穂浪士の知られざる生涯

岡島八十右衛門常樹は、江戸時代前期、赤穂浪士四十七士の一人として知られる武士です。寛文6年（1666年）、元米沢藩士の家に生まれ、のちに赤穂藩に仕えました。

常樹の出自は、浪人となった武士の家にあり、複雑な生い立ちを持っていました。父は原定辰、母は和田将監の娘で、兄弟には20歳近く年が離れた兄と、討ち入り反対派の次兄がいました。延宝3年（1675年）、浅野家家臣の養子となり、岡島家を継ぎました。赤穂藩では札座奉行として20石5人扶持で仕え、元禄7年（1694年）の備中松山城受け取りにも従軍しました。

元禄14年（1701年）、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ事件では、常樹は赤穂にいました。大石良雄の指示の下、藩札の交換業務を担い、その任務を全うしました。しかし、大石の強引な手法により、備前商人との間にはトラブルもあったとされています。事件後、常樹は大石と共に城明け渡しに関わり、家族を赤穂城外に移した後、自身は京都で暮らしました。山科の大石のもとを訪れ、誓約書を提出するなど、討ち入りへの決意を示していました。

しかし、元禄15年（1702年）頃から病に倒れ、江戸への下向が遅れました。このため、常樹の真意が一時疑われた時期もありました。これは、彼の母、妻、次兄、甥が皆討ち入りに反対していたという事情も絡んでいます。10月にようやく兄と共に江戸へ下向し、討ち入りに参加。表門隊に属し、吉良義央討伐に貢献しました。その後、長門長府藩に預けられ、介錯によって切腹しました。享年38歳でした。主君・浅野長矩と同じく、高輪泉岳寺に葬られました。

常樹には、山賊退治の武勇伝が残されていますが、その真偽は不明です。また、赤穂藩の改易に際して、常樹配下の役人が横領した事件に関与したという説も存在します。この事件に関する記述は創作によるものが多く、史実との区別が難しい部分もあります。講談などでは、常樹の性格や行動が強調された描写も見られますが、史実との整合性を確認する必要があります。

常樹の子孫は、男子2人が出家したため、岡島家は断絶しました。娘は、広島藩士と結婚しましたが、後に離縁しています。母は討ち入りに反対し、常樹の元を去りました。妻もまた討ち入りに反対し、常樹と離縁しています。

常樹の生誕当時、父はすでに浪人であり、兄とは異なり、前田家や上杉家中の原一族との交流は確認されていません。赤穂事件による連座を避けるため、上杉家に残る一族を義絶したという記録もありません。常樹の親族の子孫は、米沢藩に居住したとされています。

岡島八十右衛門常樹は、赤穂事件に巻き込まれ、複雑な生い立ちと立場の中で苦悩しながらも、最終的には主君の仇討ちに身を投じました。彼の生涯は、歴史の渦中に翻弄された一人の武士の生き様を物語っています。彼の行動や動機については、様々な解釈がなされており、今後の更なる研究が待たれます。

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