岡崎市歌

岡崎市歌（おかざきしか）は、愛知県岡崎市が公式に定めた歌です。これまでに二つのバージョンが存在しましたが、現在市歌として歌われているのは二代目のものです。

また、かつて額田郡額田町が存在した時代に制定されていた町歌についても、関連情報として触れていきます。

著作権の状況

初代および二代目の岡崎市歌は、いずれも作詞・作曲から長い年月が経過し、著作権保護期間が終了しています。そのため、現在では誰もが自由に利用できるパブリックドメインとなっています。

初代市歌（大正5年制定）

初代の「岡崎市歌」は、大正五年（一九一六年）七月一日に市制が施行されたことを記念して制定されました。岡崎市は、この時愛知県内で三番目の市として誕生しています。

作詞と作曲は、当時東京音楽学校の教授を務めていた鳥居忱氏が手掛けました。

なお、この市歌とは別に、同じ市制施行を祝う歌として、柴田顕正氏が作詞、鈴木毅一氏が作曲した「市制施行祝歌」も制作されました。

二代目市歌（昭和12年制定）

昭和の時代に入ると、初代市歌の歌詞が文語体であり、当時の社会情勢にそぐわないと判断されるようになりました。そこで、昭和十一年（一九三六年）の市制二十周年を機に、新たな市歌を制定する計画が持ち上がります。

新市歌には、「岡崎市のあらゆる集会で老若男女が喜びをもって歌い、市民を鼓舞し、心を一つにするのに役立つ」という目的が掲げられました。

当初、歌詞は懸賞募集によって選ばれることになり、前年の十月から広報紙で応募要項が告知されました。しかし、半年後に発表された入賞作品は、一等も含め全て愛知県外からの応募作品でした。市側はこれらの入選作に対し、明確な理由を示さないまま不採用とすることを決定します。

次に、旧制岡崎中学校と岡崎師範学校の教諭たちに作詞が依頼され、甲と乙の二つの候補作品が六月の市会に提出されました。しかし、この二作品も市会の同意を得られず、曲が付けられることなく未完成に終わりました。これについて、『新編岡崎市史』では、歌自体の出来栄えではなく、中央の権威ある人物による作品を望む声が影響した結果ではないかと推測しています。

こうした曲折を経て、最終的に市歌の作成は、当時東京府の八王子市や福島県の市歌なども手掛け、大正から昭和初期にかけて「黄金コンビ」と称されていた作詞家・北原白秋氏と作曲家・山田耕筰氏に依頼されることになりました。

白秋氏の自筆原稿によると、歌詞が完成したのは昭和十二年（一九三七年）四月二十五日、山田氏が曲を完成させたのは同年五月三日と記録されています。こうして、一年半にも及ぶ難航を経て完成した二代目市歌は、六月十八日に発表されました。

そして、市制施行から二十一年目の記念日にあたる七月一日に開催された式典で、地元の小学生たちによって初めて公の場で歌われました。

法規上の位置づけとしては、戦後の昭和三十七年（一九六二年）四月一日に公布された「岡崎市歌を定める条例」（条例第十号）によって正式に定められました。この条例では、市歌制定の目的を「本市の市民意識を高揚すること」と明確に定めています。

その後、一九七〇年代には、市と教育委員会が連携し、自主製作のソノシートを制作して市民への普及を図りました。

市によれば、現在の市歌は毎年七月一日の市制施行記念式典や一月一日の新年交礼会などの公式な場で斉唱されています。

額田町歌

二〇〇六年に岡崎市に編入された額田郡額田町にも、かつて町歌がありました。

これは、昭和三十一年（一九五六年）九月の町制施行を記念して、同年十二月十日に制定されたものです。

しかし、岡崎市との合併協議において、合併後は既存の岡崎市歌をそのまま引き継ぐことが決定されました。これにより、額田町歌は地域の歌として残されることもなく、合併と同時にその役割を終え、廃止されました。

制定から二年後の昭和三十三年（一九五八年）には、日本コロムビアによってレコードが製造されています。このレコードのうち、元愛知教育大学教授で岡崎市の名誉市民でもあった内藤淳氏が大切に保管していたものが存在し、閉町直前にそのご遺族から当時の町長に寄贈されています。

このように、岡崎市歌は二度の制定と、その歴史の中で様々な出来事を経て現在の形に至っています。旧額田町歌の存在も、地域の歴史を語る上で重要な要素と言えるでしょう。

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