岡崎村 (神奈川県)

岡崎村の概要

岡崎村（おかざきむら）は、神奈川県中郡に存在した村で、現在の平塚市北西部と伊勢原市南部にまたがる地域に位置していました。鈴川沿いの平坦な水田地帯と、伊勢原市南側の畑作台地が主な地形であり、集落はこれらの地形の中間に点在していました。1956年9月30日に平塚市と中郡伊勢原町に合併し、その歴史を終えました。

名称の由来

「岡崎」という地名は、台地の先端に位置することに由来しています。

地域

岡崎村は、以下の集落から構成されていました。

平塚市に編入された地域:
矢崎（やさき）
大畑（おおはた）
西海地（さいかち）
入山瀬（いりやませ）
丸島（まるしま）
北大縄（きたおおなわ）
伊勢原町に編入された地域:
大句（おおく）
馬渡（まわたり）

河川

岡崎村を流れる主な河川は以下の通りです。

鈴川（すずかわ）
大根川（おおねがわ）
善波川（ぜんばがわ）
板戸川（いたどがわ）

歴史

中世

平安時代中期には、この地域は糟屋庄（かすやのしょう）の一部でした。その後、岡崎義実がこの地を領有し、館を構え、岡崎城を築城しました。鎌倉時代には、岡崎義実が源頼朝の功臣として、鎌倉幕府から岡崎の領地を安堵されました。この領地には、馬渡、大句、矢崎、大畑、西海地、入山瀬、丸島といった村落が含まれていました。

室町時代に入ると、1456年（康正2年）に相模国三浦氏の三浦時高が岡崎城を乗っ取り、領主となりました。時高は後に子息である三浦義同（後の道寸）にこの地を継承させ、義同は岡崎に新たに城を構築し、勢力を拡大しました。

1512年（永正9年）8月には、北条早雲が伊豆相模の軍勢を率いて岡崎城を攻略し、三浦氏は敗退。岡崎は後北条氏の領地となりました。岡崎城はその後、廃城になったと考えられています。

近世

1590年（天正18年）の豊臣秀吉による小田原征伐で後北条氏が滅亡すると、徳川家康がこの地を領有し、後に幕府直轄領となりました。以降、岡崎は幕府直轄領と分割された藩領や旗本領が入り混じるようになり、明治時代を迎えることになります。

近代

1871年（明治4年）の廃藩置県により、岡崎地域の各村の藩領や旗本領は、佐倉県、六浦県、韮山県に分割されました。その後、整理統合を経て、11月には足柄県に統合されました。

1872年（明治5年）には、足柄県が大区小区制を実施し、岡崎の各村は第2大区小8区に編入されました。翌1873年（明治6年）には、学制発布に伴い、矢崎村の紫雲寺に「進修館」が開校しました（後の岡崎小学校）。

1876年（明治9年）に足柄県が廃止され、神奈川県に編入されたため、岡崎の各村は第22大区小8区に編入されました。連合戸長役場は矢崎村の満願寺に置かれました。

1889年（明治22年）4月1日、町村制が施行され、矢崎村、丸島村、大畑村、西海地村、大句村、馬渡村、北大縄村、入山瀬村が合併し、大住郡岡崎村が誕生しました。この合併に伴い、住所表記が変更され、地番も新たに付け直されました。

1890年（明治23年）には村役場が満願寺から岡崎村字山王久保に移転しました。1896年（明治29年）には大住郡が淘綾郡と合併し、中郡となりました。

1900年（明治33年）には、大磯警察署伊勢原分署岡崎巡査駐在所が開設されました。1919年（大正8年）には、岡崎村に電灯が供給されるようになりました。

1920年（大正9年）には、伊勢原町の伊勢原自働車運輸が伊勢原～平塚間の乗合自動車の運行を開始しました。

1923年（大正12年）の関東大震災では、岡崎村も甚大な被害を受け、死者20名、負傷者20名、家屋の全壊が多数発生しました。翌年、倒壊した庁舎は新築移転しました。

1929年（昭和4年）には、岡崎村の一部が中郡城島村に編入されました。1944年（昭和19年）には、岡崎村診療所が開設されました。1947年（昭和22年）には、岡崎公民館が開設されました。

戦後

1947年（昭和22年）には、岡崎村、城島村、豊田村で教育組合を結成し、大住中学校が設立されましたが、翌年には解散し、生徒は伊勢原中学校へ通学することになりました。

1953年（昭和28年）には町村合併促進法が施行され、岡崎村でも合併問題が浮上しました。馬渡地区と大句地区は伊勢原町への合併を希望しましたが、村内では意見が対立し、結論が出ませんでした。

1956年（昭和31年）9月、岡崎村はついに分村合併を決定し、大句と馬渡は伊勢原町に、残りの地域は平塚市に編入され、岡崎村は消滅しました。旧村域は「岡崎」という大字となり、村の財産は平塚市と伊勢原町で分割されました。大句と馬渡の小学生は、一旦平塚市の岡崎小学校に通学した後、伊勢原小学校に転校しました。

合併後

合併後も、旧岡崎村の地域は様々な変化を経験しました。1958年（昭和33年）には岡崎小学校に電話が架設され、1964年（昭和39年）には岡崎地区の電話番号が平塚市内の局番に変更されました。平塚市役所岡崎出張所は1964年（昭和39年）に閉鎖され、1965年（昭和40年）には郵便区が金目郵便局管轄に変更されました。1971年（昭和46年）には、中郡伊勢原町が市制を施行し、伊勢原市となりました。

行政

岡崎村役場は、神奈川県中郡岡崎村3634番地にありました。初代村長は今井栄次郎氏で、最後の村長は関谷美治氏でした。村には、選挙管理委員会、農業調整委員会、農地委員会、民生委員会、児童福祉委員会、教育委員会などが置かれていました。

教育

岡崎村には、岡崎村立岡崎小学校がありました。

警察

警察署は、伊勢原警察署岡崎駐在所が設置されていました（現在は平塚警察署岡崎駐在所）。

一部事務組合

岡崎村が関係していた主な一部事務組合には、以下のものがありました。

岡崎城島豊田教育組合立大住中学校
伊勢原岡崎城島教育組合立伊勢原中学校
中郡北部国保連合伊勢原病院

その他

岡崎村には、岡崎農業協同組合（現在は湘南農業協同組合岡崎支所）や、国保直営岡崎村診療所がありました。

交通

村内には、神奈川中央交通のバス路線が通り、矢崎、大句、城所入口、馬渡に停留所がありました。道路は、県道平塚伊勢原線（現在の平塚市道豊田岡崎線）や県道二宮伊勢原線（現在の神奈川県道63号相模原大磯線）が通っていました。

現在

現在、旧岡崎村の地域は、平塚市岡崎と伊勢原市岡崎として行政区分されています。一部地域は住居表示が実施され、地名が変更されています。旧村域は飛び地が多く、小字が入り組んでいるため、旧村域を正確に復元することは困難です。

関連人物

岡崎村に関係する主な人物として、岡崎義実、三浦義同、そして失明者のための学校を設立した秋山博が挙げられます。

参考資料

『大日本地誌大系 新編相模国風土記稿 第三巻』
『中郡勢誌』
『伊勢原町勢誌』
『平塚市制40周年記念誌 図録 目で見る平塚市』
『創立100周年記念誌 あゆみ』（平塚市立岡崎小学校）
『神奈川県町村合併誌』
『史蹟と文化財の このまちを語る』
『岡崎の今と昔』
『平塚共済病院 75年のあゆみ』
『相模岡崎城跡総合調査報告書』
『広報ひらつか』
『広報いせはら』
『図説 平塚の歴史』
『平塚市史』
『伊勢原市史』

関連項目

* 神奈川県の廃止市町村一覧

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