岡本信

岡本 信

（おかもと しん、1949年 - 2009年）

日本の歌手、ミュージカル俳優、実業家。本名は岡村勝太郎。特に1960年代後半のグループサウンズ（GS）黄金期に「ザ・ジャガーズ」のリードボーカルとして絶大な人気を誇った人物である。

生涯とキャリア

1949年4月20日、神奈川県に生まれた。音楽への情熱を抱き、1964年に結成された宮ユキオ率いる「宮ユキオとザ・プレイ・ファイブ」にリードボーカルとして参加。類まれな歌唱力と端正なルックスで注目を集める。

1967年、バンド名が「ザ・ジャガーズ」と改められたのを機に、フィリップス・レコードよりシングル『君に会いたい』でメジャーデビュー。この曲はたちまち大ヒットとなり、ザ・ジャガーズはタイガース、テンプターズと並ぶ人気グループへと駆け上がった。岡本信はその中心人物として、甘く情感豊かな歌声で多くの若者を魅了した。

しかし、グループサウンズ人気の沈静化に伴い、ザ・ジャガーズは1971年に惜しまれつつ解散。岡本はその後ソロ歌手としてのキャリアを歩むが、1973年には一度表舞台から退くことを決断する。

芸能界を離れた後も、音楽への情熱が尽きることはなかった。ポール大源寺ら気の合う仲間と共にバンドを組んで演奏活動を続け、ライブハウスなどで歌声を披露した。また、活躍の場は音楽だけにとどまらず、ミュージカル俳優として舞台に立つなど、表現者としての多才さを見せた。さらに、実業家としての手腕も発揮し、東京の歌舞伎町で高級会員制クラブを経営するなど、多岐にわたる活動を行った。

1981年、日本のGSリバイバルブームの中でザ・ジャガーズが再結成されると、岡本信は再びリードボーカルとしてグループに復帰。往年のファンを熱狂させるとともに、新たなファンも獲得し、精力的にライブ活動やテレビ出演をこなした。1988年には、かつてのライバルであったタイガースのメンバーを中心に結成された「タイガース・メモリアル・クラブ・バンド」にも参加し、GSレジェンドとしてその存在感を示した。

晩年と逝去

長年にわたり音楽活動を続ける傍ら、晩年は健康上の問題を抱えていた。特に膵臓の病に悩まされ、入退院を繰り返すなど闘病生活を送っていたことが、親しい関係者によって語られている。死去の約2ヶ月前からは膵炎も発症していたという。

彼の公の場での最後の姿となったのは、2009年2月27日にNHK衛星第2テレビで放送された特別番組『BS永遠の音楽大全集 〜グループ・サウンズ大全集〜』であった。この番組にソロとして出演した岡本は、変わらぬ歌声でデビュー曲『君に会いたい』を情感たっぷりに歌い上げ、多くの視聴者に感動を与えた。

2009年4月19日、岡本信は自宅マンションの浴槽内で倒れているところを知人女性によって発見された。警察の捜査の結果、事件性はなく、入浴中に心不全を起こしたことによる自然死と断定された。59歳没。奇しくも、翌日に60歳の誕生日を迎えるはずだったその前日のできごとであった。

死去直前の2009年3月8日にはアメーバブログを新たに開設していたが、彼の最初の投稿は、皮肉にも自らの訃報を伝える記事が掲載された4月21日となった。

突然の訃報に、音楽業界やファンは深い悲しみに包まれた。2009年5月20日には東京都内で本葬にあたる「お別れの会」がしめやかに執り行われた。この席で、ザ・ジャガーズのメンバーは、故人を音楽で送り出す「音楽葬」を同年8月13日に開催する意向を表明した。

グループサウンズを代表するボーカリストとして、そして多才なエンターテイナーとして多くの人々を魅了した岡本信。その甘く切ない歌声と情熱は、今もなお多くの人々の心に生き続けている。

ディスコグラフィ（一部）

シングル

『君に会いたい』
『元気な背番号』
その他多数

アルバム/関連作品

G.S.クラブ
スーパー・グループ・サウンズ
Hello Everybody（アイ高野追悼）
* OJPC物語 2001

（タイガース・メモリアル・クラブ・バンド関連のディスコグラフィは除く）

もう一度検索