岡本勝 (国文学者)

近世俳諧研究の第一人者：岡本勝

岡本勝（おかもと まさる、1938年6月5日-2007年3月11日）は、近世俳諧を専門とする日本の国文学者である。三重県に生まれ、名古屋大学大学院国文学博士課程を中退後、その卓越した研究能力で日本の近世俳諧研究に大きく貢献した。

彼の専門は近世俳諧であり、その深い造詣は数々の著書、編著書に見て取ることができる。1989年には「近世俳壇史新考」で文学博士号を取得。これは近世俳諧研究における彼の圧倒的な貢献を証明するものである。

学術的な業績のみならず、教育者としても優れた能力を発揮した。帝塚山短期大学、愛知教育大学において助教授、教授として後進の育成に尽力し、多くの学生に影響を与えた。愛知教育大学では教授職を2002年に定年退官するまで務め、名誉教授の称号を授与されている。その後も中部大学教授として、教育・研究活動を継続した。

岡本勝の研究は、近世俳諧のみに留まらず、関連する広範な領域に及ぶ。例えば、初期の子供絵本に関する研究も行っており、日本の出版文化史への貢献も顕著である。彼の著作は、専門家だけでなく、一般の読者にも分かりやすく、親しみやすい表現で書かれており、広く読まれている。

主な著書には、『大淀三千風研究』（1971）、『近世俳壇史新考』（1988）、『子ども絵本の誕生』（1988）、『「奥の細道」物語』（1998）、『近世三重の俳人たち』（2000）、『俳文学の森で』（2002）、『芭蕉』（2004）、『俳文学こぼれ話』（2008）、『近世文学論叢』（2009）などがある。これらは近世俳諧史、俳諧における個々の俳人の研究、そして関連する広範な文学研究にわたる内容を網羅している。

また、編著書も多く手がけている。『近世文学研究事典』（雲英末雄共編、1986）は近世文学研究において重要な参考文献として現在も活用されており、その編纂における貢献も大きい。さらに、『江戸時代初期出版年表 天正19年～明暦4年』（岡雅彦ら共編、2011）など、時代背景や社会状況を理解する上で重要な資料の編纂にも携わった。さらに、井原西鶴の作品の校訂にも取り組み、『万の文反古』の編纂など、古典籍の研究と保存にも貢献している。

岡本勝は、近世俳諧という専門分野において、深い知見と卓越した研究能力、そして教育者としての熱意をもって、日本の国文学研究に多大な貢献をした稀有な学者であった。彼の残した著作は、今後も多くの研究者や愛好家に読み継がれ、日本の近世文学研究に大きな影響を与え続けるであろう。

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