岡本清纓

岡本 清纓（おかもと きよふさ）

岡本清纓（1894年2月11日 - 1983年2月22日）は、日本の歯科医療に多大なる影響を与えた人物です。彼は東京医科歯科大学で口腔衛生学講座の教授を務め、また、付属の歯科技工士学校と歯科衛生士学校の校長も兼任しました。さらに、後には愛知学院大学の歯学部長として、歯科教育の発展にも寄与しました。

学生時代と初期のキャリア

岡本は東京歯科医学専門学校を卒業し、卓球選手としても活動していました。卒業後、恩師の勧めでライオン歯磨（当時の小林商店）に入社し、口腔衛生普及活動の最前線で奮闘しました。1921年には日本初の小児専門歯科診療所「ライオン児童歯科院」が設立され、彼は初代院長として18年間にわたり診療と啓発に尽力しました。この院は小児歯科の先駆けとして、日本における口腔衛生史上、特に重要な役割を果たしました。

地域貢献と戦時活動

北海道では、開業歯科医の第一号として地域の歯科医療を確立し、その後、大阪に「ライオン歯科衛生院」を設立しました。ここでは歯科衛生士の養成や学校歯科保健の充実に尽力し、戦時中も地域の貢献を続けました。1939年に発表した著書『口腔衛生と講演法』は、歯科界でベストセラーとなり、全国各地で講演を行い、広く口腔衛生の重要性を啓発しました。

戦後の活動と影響

戦後、岡本は日本学校歯科医会の初代理事長に就任し、全国的な虫歯予防運動を推進しました。1956年の全国学校保健協議会では、「虫歯半減運動」を広めるための講義を行い、教育者としての役割も果たしました。大阪大学歯学部での非常勤講師を経て、60歳で東京医科歯科大学の教授に就任。彼は、学問としての口腔衛生学の確立に大きく貢献しました。

岡本は66歳で愛知学院大学の設立に尽力し、初代学部長を20年間務めました。この時期、私立歯科大学の設立が困難な時代において、その実現を成し遂げたことは彼の偉業の一つとされています。特に、設立に際して詠んだ俳句「ほころばぬままの花などあるべしや」は、彼の喜びを表現するものとして伝わります。

卓球との関わり

岡本は日本卓球協会の副会長も務めるなど、卓球にも情熱を注いでいました。『日本卓球協社』のコラムでは、練習の重要性やスポーツ医学に基づいた練習方法について言及するなど、卓球選手としての視点からも貢献を続けました。

略歴と著作

略歴

• - 明治27年: 福島県西白河郡に誕生
• - 大正6年: 東京医科医学専門学校を卒業
• - 同年: ライオン歯磨本舗に入社
• - 大正10年6月: ライオン児童歯科院長に就任（1938年まで）
• - 昭和14年: ライオン歯科衛生院長に就任
• - 昭和24年: 歯科医師国家試験委員に任命

著作

• - 『學校歯科衛星』（日本歯科評論社、1949年）
• - 『口腔衛生と講演法』（日本口腔衛生社、1939年）
• - 『歯界遍歴六〇年 : 岡本清纓自叙伝』（医歯薬出版、1984年）

岡本清纓は、歯科医療と口腔衛生の発展だけでなく、健康教育や地域への貢献においても、実績を残した、真の先駆者でありました。彼の功績は、現在にも多くの人々に受け継がれています。

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