岡本神草

岡本 神草

岡本 神草（おかもと しんそう、本名：敏郎）は、1894年11月10日に神戸市で生まれた日本画家です。惜しくも38歳という若さで世を去ったため、その活動期間は限られたものでしたが、残された作品は独特の光彩を放っています。

画風と表現

彼の作品の中心をなすのは、官能的で妖艶な雰囲気を持つ女性像です。そこには、年齢を重ねた女性が持つ奥ゆかしい美しさや、化粧や衣装によって作り上げられた舞妓の人工的な美しさが、彼独自の感性を通して捉えられています。初期の画業においては、10代半ばで既に卓越した筆致で花鳥画を手がけていましたが、その後、同時代の画家である竹久夢二の世界観に強く惹きつけられ、彼の描く少女の姿を模写したり、夢二の影響を感じさせる作品を生み出したりしました。しかし、最終的に岡本神草が確立したのは、彼ならではの退廃的な美しさすら感じさせる、濃密な女性表現でした。

略歴

美術教育は京都市で受け、1915年（大正4年）に京都市立美術工芸学校の絵画科を卒業しています。この頃、同窓生だった甲斐荘楠音や入江波光、玉村方久斗といった画家たちと共に、革新的な日本画を目指す研究グループ「密栗会」の立ち上げに関わりました。

1918年（大正7年）には、京都市立絵画専門学校（現在の京都市立芸術大学）を卒業。同年開催された第1回国画創作協会展において、彼の作品「口紅」が入選を果たします。この展覧会では、同じく前衛的な表現で注目されていた甲斐荘楠音の「横櫛」と共に、最高賞の候補に挙げられました。しかし、審査員であった村上華岳が「横櫛」を強く推す一方、土田麦僊は「口紅」を支持し、両者の意見が対立します。結局、調停役となった竹内栖鳳の判断により、金田和郎の「水蜜桃」が受賞するという出来事がありました。

その後も国画創作協会展での発表を続け、1920年（大正9年）には「拳を打てる三人の舞妓の習作」を出品し、その評価を確かなものとします。翌1921年（大正10年）には、官展である第3回帝国美術院展覧会（帝展）に「拳を打てる三人の舞妓」を出品しました。

画壇での活動は続き、1922年（大正11年）には福村祥雲堂が主催する「九名会」にも参加しています。帝展への出品も継続し、1928年（昭和3年）の第9回展に「美女遊戯」、1932年（昭和7年）の第13回展に「婦女遊戯」がいずれも入選しています。

1933年（昭和8年）2月13日、脳溢血のため急逝しました。その早すぎる死は、今後のさらなる活躍を期待されていた画壇にとって大きな損失でした。

主な作品

彼の代表的な作品としては、以下が挙げられます。

• - 「赤いリボン」（1915年頃） - 京都国立近代美術館所蔵
• - 「口紅」（1918年） - 京都市立芸術大学芸術資料館所蔵
• - 「婦女遊戯」（1932年） - ロイヤルホテル所蔵

岡本神草の残した作品は、その短い生涯の中で探求された独自の女性美を今に伝えており、没後もその価値は再評価されています。

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