岡村重夫

岡村重夫（1906年10月21日 - 2001年12月22日）は、日本の社会福祉学者であり、社会福祉の理論構築に尽力しました。孝橋正一、嶋田啓一郎らと共に、戦後の日本における社会福祉学の基礎を築いた人物として知られています。

大阪府大阪市に生まれた岡村は、旧制高知高等学校を経て、1931年に東京帝国大学文学部倫理学科を卒業しました。戦時中は陸軍教授、予備陸軍中尉を務めました。戦後、1950年に大阪市立大学教授に就任し、1955年からは同大学家政学部長も兼任しました。

その後、1970年にに関西学院大学教授、1975年には佛教大学教授を歴任し、1977年には大阪社会事業短期大学学長に就任するなど、教育者としても多岐にわたる活動を展開しました。1987年には日本地域福祉学会を設立し、初代会長に就任しました。2001年12月22日に95歳で亡くなりました。

岡村重夫の主な著書としては、『社会福祉学総論』（柴田書店、1956年）、『地域福祉論』（柴田書店、1973年）、『地域福祉論(社会福祉選書①)』（光生館、1974年）、『社会福祉原論』（全国社会福祉協議会、1983年初版）などがあります。これらの著作を通じて、社会福祉の理論と実践に関する重要な貢献を行いました。

特に『社会福祉学総論』は、社会福祉学の基礎理論を体系的に解説した書籍として、長年にわたり多くの学生や研究者に読まれています。また、『地域福祉論』は、地域社会における福祉の重要性を強調し、地域住民が主体的に福祉活動に参加することの必要性を説いた先駆的な研究として評価されています。

岡村重夫の研究は、社会福祉の対象を個人や家族だけでなく、地域社会全体に広げた点に大きな特徴があります。彼は、地域住民が互いに支え合い、協力し合うことで、より良い社会を築き上げることができると考えました。その思想は、現代の地域包括ケアシステムやコミュニティソーシャルワークの理論的基盤となっています。

松本英孝による研究書『日本の社会福祉学―岡村重夫とその批判者たち』（三学出版、2002年）では、岡村重夫の業績とその批判について詳細に分析されています。この書籍を通じて、岡村重夫の社会福祉学に対する貢献をより深く理解することができます。

岡村重夫は、日本の社会福祉学の発展に多大な貢献をしただけでなく、多くの後進を育成しました。彼の思想と業績は、現代の社会福祉においても重要な意味を持ち続けています。

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