岡田典弘

岡田典弘のプロフィール

岡田典弘（おかだ のりひろ、1947年10月17日生まれ）は、日本の著名な分子進化学者および分子生物学者です。彼は、進化の系統関係を調べる新しい技術「レトロポゾン法」を開発し、この方法を駆使してクジラとカバの親密な関係を証明したことで知られています。東京工業大学の教授としてのキャリアを経て、台湾の国立成功大学教授、国際科学振興財団の主席研究員やシーラカンス研究所の所長など、多様な職務を経て、現在は北里大学特任教授および長浜バイオ大学客員教授として活動しています。

学歴と初期の経歴

岡田は東京都に生まれ、開成中学校・高等学校を卒業後、1967年に東京大学の理科II類に入学しました。在学中は演劇に熱中し、1973年には農学部農芸化学科を卒業。その後、1975年に東京大学薬学系研究科の修士課程を修了し、1978年に薬学博士号を取得しました。その後、アメリカ国立衛生研究所（NIH）の研究員として活動を開始しました。

日本に戻った彼は、1979年から筑波大学生物科学系講師としてキャリアを築き、次第に助教授、教授へと昇進しました。さらに1992年からは東京工業大学生命理工学部の教授として、分子生物学や進化に関する研究を行いました。2013年には定年退職し、それ以降は台湾の国立成功大学で「闘魚」の脳の分析を行いながら、国際科学振興財団の主席研究員としても活動しています。

レトロポゾン法の確立

岡田が筑波大学で講師をしていた30代半ばに、短鎖散在反復配列（SINE）がtRNA起源で進化したことを発見しました。彼はSINEがゲノム中に挿入されると再び出ることがない性質を利用し、この特性を元に「レトロポゾン法」（SINE法）を考案しました。この新しい手法によって、従来は特定が難しかった多くの動物の系統関係を明らかにしました。特に彼の研究で有名なのが、クジラとカバの親和性の証明です。この発見により、ほ乳動物の大部分の系統関係が解明され、今では多くの進化系統学に関する教科書にも引用されています。

重要な研究成果

岡田の研究はSINEだけに留まらず、他の生物群の系統関係についても多くの洞察を提供しています。最近では、北方獣類、アフリカ獣類、貧歯類という有胎盤哺乳類の祖先系統が同時に分岐したことを明らかにし、この分岐は地質の変化と密接に関連していると提唱しました。さらに、彼の研究はゲノム情報を基にした新しい地質学的仮説の形成にも貢献しています。

また、岡田はレトロポゾンの進化的役割を探求し、機能を持たないとされていたジャンクDNAの一部が重要な役割を果たしている可能性があることを示しました。例えば、彼は動物の脳形成にSINEが関与することを実証し、これによりレトロポゾンの進化的意義が再評価されるきっかけを作りました。

さらに、岡田はシーラカンスに関する研究を通じて、自然界の驚くべき進化のストーリーを解き明かし、多くの研究機関と協力しながら全国規模のシーラカンスゲノムプロジェクトに参加しています。

主な受賞歴

岡田はその業績に対し、多くの賞を受賞しており、青少年科学創造賞や日本遺伝学会木原賞などを受賞しています。また、アメリカ科学振興協会（AAAS）からフェローの称号を選出され、国際的にもその名声を確立しています。

岡田典弘の研究は、分子生物学と進化学の架け橋となっており、次世代の科学者たちにインスピレーションを与え続けています。

もう一度検索