岡田屋鉄蔵

岡田屋 鉄蔵

（おかだや てつぞう）

概要

日本の女性漫画家。本名は非公開。2016年以降は、作品を発表する際の筆名として崗田屋 愉一（おかだや ゆいち）も用いるようになり、以降は旧ペンネームの「岡田屋鉄蔵」と新ペンネームの「崗田屋愉一」を作品や連載媒体によって使い分けている。

主に時代劇ジャンルで創作活動を行い、綿密な時代考証に基づいた背景描写や、登場人物たちの心理を深く掘り下げた人間ドラマに定評がある。

経歴と活動

2007年、宙出版から刊行された単行本『タンゴの男』で商業漫画家としてのキャリアをスタートさせた。初期には恋愛漫画やボーイズラブ作品なども手掛けている。

その後の活動の大きな転機となったのは、2010年に白泉社より発表された『奇譚時代劇 千』である。この作品を契機に、岡田屋鉄蔵は時代劇ジャンルへと創作の中心を移していった。この分野での筆致は高く評価され、特に2011年に太田出版から刊行された『ひらひら 国芳一門浮世譚』は、文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出される栄誉に浴した。この作品は、江戸時代末期の浮世絵師、歌川国芳と彼の門下生たちの日常や葛藤を描いたものであり、歴史的事実を踏まえつつ、登場人物たちの個性や関係性を魅力的に描写している点が評価されたものと考えられる。

2023年7月現在も、二つのペンネームを使い分けながら精力的に創作活動を続けている。代表的な連載作品としては、岡田屋鉄蔵名義で少年画報社の『ヤングキングアワーズ』にて連載中の『MUJIN-無尽-』（2015年連載開始）がある。また、崗田屋愉一名義では、時代小説の巨匠、池波正太郎の代表作をコミカライズした『雲霧仁左衛門』（リイド社『コミック乱』にて2018年連載開始）を手掛けている。これらの作品は、いずれも長期にわたる人気を博している。

主な作品リスト（単行本化作品中心）

岡田屋鉄蔵、崗田屋愉一両名義で、初期作品から現在に至るまで数多くの単行本が刊行されている。

『タンゴの男』（2008年、宙出版） - デビュー単行本。
『千夜一夜 しとねのひめごと』（2009年、リブレ出版）
『千 長夜の契』（2010年、白泉社） - 『奇譚時代劇 千』を単行本化。
『テルペノイド』（2011年、リブレ出版）
『ひらひら 国芳一門浮世譚』（2011年、太田出版） - 文化庁メディア芸術祭推薦作品。
『千 螺旋の錠』（2012年、白泉社） - 『奇譚時代劇 千』の続編。
『ライアテア』（2013年、白泉社）
『タンゴの男 the final』（2013年、宙出版） - デビュー作に未収録作品等を加えた改訂版。
『極楽長屋』（2013年、マッグガーデン） - 時代劇作品。
『口入屋兇次』（2015年、集英社、全3巻） - 時代劇作品。
『MUJIN-無尽-』（2015年 - 、少年画報社、既刊13巻 ※2023年7月現在） - 岡田屋鉄蔵名義の長期連載。
『大江戸国芳よしづくし』（2017年、日本文芸社） - 崗田屋愉一名義。
『極楽長屋 新装版』（2019年、リイド社） - 『極楽長屋』の崗田屋愉一名義での新装版。
『雲霧仁左衛門』（原作：池波正太郎、2019年 - 、リイド社、既刊8巻 ※2023年7月現在） - 崗田屋愉一名義の長期連載。
『堤鯛之進 包丁録 極楽長屋編』（2019年、幻冬舎） - 崗田屋愉一名義。
『堤鯛之進 包丁録 江戸料理編』（2021年、幻冬舎） - 崗田屋愉一名義。

単行本未刊の連載作品としては、柴田錬三郎原作の『からふね 眠狂四郎異聞』（集英社『グランドジャンプPREMIUM』、2017年 - 2018年連載）がある。

漫画作品以外では、アンソロジー集『マンガ訳 太宰治』（2013年、実業之日本社）に寄稿しているほか、作家・島田荘司の小説『盲剣楼奇譚』（2017年 - 2018年、神戸新聞連載）で挿絵を担当するなど、幅広い分野で才能を発揮している。

まとめ

岡田屋鉄蔵（崗田屋愉一）は、時代劇漫画家として確固たる地位を築いている日本の女性漫画家である。初期の活動を経て時代劇へと注力し、文化庁メディア芸術祭推薦作品に選ばれるなど、その筆致と世界観構築能力は高く評価されている。二つのペンネームを使い分けるスタイルは、それぞれの作品世界への深い思い入れの表れとも解釈できるだろう。現在も人気連載を複数抱え、今後の活躍が期待されている。

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