岡谷高架橋

岡谷高架橋

岡谷高架橋は、長野県岡谷市を走る長野自動車道に架かる重要な橋梁です。この橋は、単なる道路の一部ではなく、高度な技術と周辺環境への配慮が融合した構造物として、その存在感を示しています。

歴史

1981年、中央自動車道の一部として小淵沢ICから伊北ICが開通し、その後の1986年には岡谷JCTと岡谷ICを結ぶ支線が開通しました。この支線の一部である岡谷高架橋は、1983年に建設が始まり、1986年2月に完成しました。その後、1988年に岡谷IC以北の延伸に伴い、岡谷JCTと岡谷ICの間が長野自動車道に組み込まれました。

岡谷高架橋は、その卓越した技術が評価され、1986年度には土木学会田中賞とプレストレストコンクリート技術協会賞を受賞しています。しかし、1991年には床板の鋼棒が破断し、コンクリート片が落下する事故が発生。2009年の緊急点検では、コンクリートのひび割れや鋼棒の腐食・破断が確認されました。これは、冬季の厳しい寒さによる凍結防止剤の散布と、グラウトの充填不足が原因と考えられています。

構造

岡谷高架橋は、下り線が578.3m、上り線が593mの長さを誇ります。橋梁形式は5径間連続ラーメン箱桁橋で、支間長は南から順に下り線87.5m、上り線102m、126m、148m、126m、87.88mとなっています。特に、最大の支間長148mは、建設当時としては同形式の橋で日本最長、世界でも2番目の長さでした。

橋は天竜川とJR中央本線を跨いでおり、その複雑な構造は岡谷JCTとの接続部に顕著です。岡谷JCTから橋を渡った先には岡谷トンネルが続き、その先が岡谷ICとなっています。

この橋が建設された地域は、中央構造線と糸魚川静岡構造線の断層帯が近いため、高い耐震性が求められました。そのため、多径間連続ラーメン箱桁橋が採用され、耐震性の向上とともに、騒音の減少や維持管理費の削減、高速走行性の向上にも貢献しています。また、諏訪湖や八ヶ岳などの美しい景観を損なわないよう、橋桁断面は逆台形に、橋脚には隅切りを施すなど、美観にも配慮がなされています。

施工

建設には、ディビダーク式カンチレバー工法が用いられました。高所での作業であることや、市街地での施工という制約から、作業時間には厳しい制限がありました。さらに、冬季には氷点下15度にもなる寒冷地という環境も、建設を困難にする要因でした。そのため、硬練り高強度コンクリートの使用が難しく、現場では流動化コンクリートが採用されました。主桁には14,800立方メートルものコンクリートが使用され、プレストレストコンクリートの施工や、マイコンによる施工管理を導入することで、設計値と実測値を比較・補正しながら建設が進められました。

岡谷高架橋は、西山の中腹にある岡谷JCTと川岸山地の谷間を渡るため、橋脚の高さは49mから55m、最高所は地上60mにもなります。岡谷市街の南西部に位置し、市内の各所からその姿を見ることができる、まさにランドマークと言えるでしょう。橋の建設に伴い60戸の家屋が移転しましたが、高架下は公園として整備され、地域住民の憩いの場となっています。

岡谷高架橋は、技術とデザインが見事に融合した橋梁であり、その存在は岡谷市の風景に欠かせないものとなっています。

参考文献

* 『鉄道の鹿島』鹿島技術研究所、2006年8月1日。

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