岡部あおみ

岡部あおみ：美術と社会をつなぐキュレーターの軌跡

岡部あおみ氏は、1950年生まれの日本の研究者、キュレーターです。国際基督教大学卒業後、フランスのソルボンヌ大学大学院とルーヴル学院で研鑽を積み、近現代美術史とミュゼオロジー（博物館学）を専門としました。

そのキャリアは、国際的な舞台での活躍と、日本の現代美術シーンへの貢献という二つの側面を備えています。パリのポンピドゥー・センターでの展覧会への参加や、同センターの国際美術映像ビエンナーレ審査員を務めるなど、早くから国際的なネットワークを築きました。一方、日本では武蔵野美術大学教授として後進の育成に尽力する一方、キュレーターとして数々の展覧会を企画・開催し、現代美術を社会に発信することに貢献しました。

特に注目すべきは、1995年の阪神・淡路大震災後の活動です。この経験をきっかけに、彼女は阪神アートプロジェクトを企画。現代美術に関わる人々との対話やインタビューをアーカイブするウェブサイト「Culture Power」を創設し、現代美術の社会的な役割を模索しました。

彼女の活動は、展覧会キュレーションにとどまりません。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科の開設にも携わり、教育者としての顔も持っています。フランス美術評論家連盟、日本美術史学会会員としての活動、大原美術館芸術顧問、資生堂ギャラリー・アドヴァイザー、メルシャン軽井沢美術館チーフキュレーターなど、多様な立場で日本の美術界に貢献しています。

岡部氏のキュレーションは、常に芸術と社会との関わりを意識したものとなっています。例えば、2003年の「おんなのけしき　世界のとどろき」展では、女性の視点を取り入れた作品を展示。また、彼女は長年に渡り、カナダのバンフ・アーティスト・イン・レジデンス参加支援プロジェクトの実行委員長も務めるなど、国際交流にも積極的に取り組んでいます。

その活動は、数多くの展覧会や出版物、映像作品にも表れています。パリ・ポンピドゥー・センターでの展覧会への参加、メルシャン軽井沢美術館の開館からの運営、日本の現代美術を紹介する展覧会や国際交流プロジェクトなど、多岐にわたります。

主な展覧会としては「ミロ、夢の迷宮」展、「バルテュスとジャコメッティ」展、「ジョルジュ・ルース」展などを企画。また、『バスチーユ・ロマネスク』、『アート・フィールド]フランス現代美術』、『ポンピドゥー・センター物語』など、数多くの著書も発表しています。映像作品では、『田中敦子　もうひとつの具体』を監督しました。

岡部あおみ氏は、単なるキュレーターの枠を超え、研究者、教育者、そして社会活動家として、現代美術と社会との架け橋となる活動を精力的に続けています。その活動は、今後も日本の現代美術界に大きな影響を与え続けることでしょう。

主な活動年表

1986年：パリ・ジョルジュ・ポンピドゥー・センター「1910-1970 前衛芸術の日本」展共同コミッショナー
1990、92年：ポンピドゥー・センター「国際美術映像ビエンナーレ」審査員
1993-95年：パリ国立高等美術学校客員教授
1995年：阪神・淡路大震災後、阪神アートプロジェクト企画、「ミロ、夢の迷宮」展
1995-99年：メルシャン軽井沢美術館チーフキュレーター
1997年：「バルテュスとジャコメッティ」展
1998年：「眼と精神／フランス現代美術展」共同コミッショナー、『田中敦子　もうひとつの具体』監督
1999年：「ジョルジュ・ルース」展、武蔵野美術大学教授就任
1999-2003年：カナダ、バンフ・アーティスト・イン・レジデンス参加支援プロジェクト実行委員長
2001年：「バンフ・レジデンスの作家たち」展キュレーター
2003年：「おんなのけしき　世界のとどろき」展キュレーター
2011年：武蔵野美術大学教授退官
2017年：アートオリンピア審査員
第17回文化庁メディア芸術祭審査員

主な著書

『バスチーユ・ロマネスク』（共著）
『[アート・フィールド]フランス現代美術』
『アート・シード／ポンピドゥー・センター美術映像ネットワーク』
『ポンピドゥー・センター物語』
『マイ・アート／コレクターの現代美術史』（共著）
『ミュゼオロジー入門』（共著）
『現代芸術論』（共著）
『アートと女性と映像　グローカル・ウーマン』
『アートマネージメント』（共著）
『ミュゼオロジー実践篇―ミュージアムの世界へ』（監修）
* 『アートが知りたい　本音のミュゼオロジー』（編著）

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