岡野保次郎 (実業家)

岡野保次郎の生涯と業績

岡野保次郎（おかのやすじろう、1891年2月1日 - 1976年12月7日）は、日本の実業家であり、特に航空機産業における重要な役割で知られています。茨城県出身の彼は、土浦中学校時代に高杉晋一と同期として学び、その後東京帝国大学法科大学英法科を1917年に卒業しました。卒業後すぐ、岡野は三菱合資会社に入社し、彼のキャリアのスタートを切ります。

彼は三菱重工業の神戸造船所や航空機部門で働きながら、1942年には名古屋航空機製作所の所長に就任しました。この重要なポジションにおいて、岡野は零式艦上戦闘機や雷電、四式重爆撃機、百式司令部偵察機といった既存機の改良に注力しつつ、烈風をはじめとする新型機の設計と試作を推進しました。しかし、1945年の終戦に伴う空襲で工場は休止状態に追い込まれます。

終戦後の1946年、岡野は三菱日本重工業の社長に就任しました。占領下の日本では連合国軍によって航空機の生産や研究が禁じられていました。この非常に困難な局面で、岡野は「航空は必ず再開する」と強く主張しました。彼は設計技術者が社外に散逸してしまうのを防ぐため、造船や自動車、橋梁、産業機械といった分野に人材を分散配置させることに尽力しました。この対策により、1952年にサンフランシスコ講和条約が発効し、日本の航空機研究が再開された際に、岡野は容易に人材を再集結させることができました。

1950年には財閥解体が進行し、三菱重工業は3つに分割され、その際の代表清算人を務めることとなります。しかし、彼は1957年にその職を辞しました。さらに1964年には三菱としての再合同を果たし、相談役に就任しました。

岡野はその功績に加えて、経済団体連合会の防衛生産委員長や航空機工業審議会会長、日本国有鉄道の監査委員長、さらには原子力研究所の監事、日本ロケット開発協議会の会長といった多くの重要な政府や民間団体での役職も歴任しています。

彼の生涯にわたる業績は日本の航空機産業の発展に多大な影響を与え、戦後復興の象徴とも言えるでしょう。岡野保次郎は1976年に他界するまで、その知見と経験を多くの場で生かし続けました。

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