岡野包秀

岡野包秀：赤穂浪士四十七士の生涯と忠臣蔵におけるイメージ

岡野包秀（おかのかねひで、1680年-1703年）は、江戸時代前期の赤穂藩士であり、赤穂浪士四十七士の一人として知られています。父は岡野包住、通称は金右衛門、本姓は藤原氏、家紋は釘貫でした。

生い立ちと赤穂事件

延宝8年（1680年）、赤穂藩士・岡野包住の嫡男として赤穂に生まれました。幼名は九十郎。父が病没した際は、江戸で家老・大石良雄らと連絡を取り合う重要な役割を担っていました。父の死後、せめてもの孝行として、父と同じ「金右衛門」と名乗りました。

元禄14年（1701年）、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ際には、まだ家督を継いでおらず部屋住みの身でした。事件後、父と共に赤穂を離れ、江戸へ下向。堀部武庸の借家に身を寄せ、父が病没するまで看病しました。 父の死後、一人息子であった包秀は、江戸にいたため、故郷の田井村民によって共同墓地に埋葬されました。

吉良邸討ち入りと最期

元禄15年12月15日（1703年1月31日）、吉良邸討ち入りでは表門隊に所属。十文字槍の使い手として活躍し、狭い門から飛び出してくる敵を次々と討ち取っています。討ち入り後、伊予松山藩に預けられ、加藤斧右衛門の介錯によって切腹しました。享年24。主君・浅野長矩と同じ高輪泉岳寺に葬られ、法名は刃回逸剣信士です。

俳諧への造詣

包秀は俳諧にも造詣が深く、放水子、竹原といった雅号を持っていました。『俳諧二ツ竹』にもその句が収録されており、文武両道の人物であったことが伺えます。

忠臣蔵における岡野包秀像

忠臣蔵の創作作品では、史実とは異なる岡野包秀像が描かれることがあります。例えば、いくつかの演劇や映画では、大石内蔵助を諫める場面や、吉良邸を探る際に町民から誤解され、暴力を振るわれる場面などが描かれています。

特に有名なのは、「恋の絵図面取」と呼ばれる物語です。この物語では、包秀は美男子として描かれ、吉良邸の絵図面を入手するために、本所大工元締めの娘・お艶と恋愛関係になり、絵図面を盗ませます。しかし、その後、自責の念に苦しむという悲劇的な展開になります。これは、史実とは大きく異なる創作であり、吉良邸絵図面の入手方法についても、史実とは矛盾する点が多くあります。

まとめ

岡野包秀は、赤穂浪士四十七士の一人として、その生涯と吉良邸討ち入りでの活躍が知られています。しかし、忠臣蔵の創作作品では、史実とは異なる、脚色されたイメージで描かれることも多く、史実と創作を区別して理解することが重要です。彼の生き様は、忠義と孝行、そして時代の悲劇を象徴する存在として、現代にまで語り継がれています。 彼の俳諧への造詣も、多様な才能を持つ人物であったことを示唆しており、より人間味あふれる人物像を垣間見ることができます。 さらに、創作作品における彼のイメージは、時代や作者の思想を反映したものであり、忠臣蔵という物語がどのように受け継がれてきたかを知る上で貴重な資料となっています。 彼の生涯を通して、歴史の複雑さと、人々の記憶がどのように形作られていくのかを考えるきっかけを与えてくれます。

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