岡野昇

岡野昇は、1876年（明治9年）に東京で生まれ、1949年（昭和24年）に生涯を終えた人物です。彼は、日本の鉄道技術の発展に大きく貢献した土木工学者であり、同時に鉄道官僚、そして実業家としてもその名を刻みました。

初期のキャリア

1899年（明治32年）、岡野は東京帝国大学工科大学土木科を卒業しました。卒業後、日本鉄道に入社し、技師として水戸保線事務所長に任命されました。1905年（明治38年）には、信号や連鎖装置の視察のため欧米諸国へ出張し、最新の技術を学ぶ機会を得ました。この経験は、彼の後のキャリアに大きな影響を与えました。

鉄道官僚としての活躍

日本鉄道の解散後、岡野は逓信省鉄道作業局に転じ、ベルリンでさらに専門的な知識を深めました。その後、帝国鉄道庁技師、鉄道院技師兼内務技師、鉄道院工務局長、鉄道省工務局長と、鉄道行政の中枢を担う要職を歴任し、1924年（大正13年）には鉄道次官に就任しました。この間、彼は日本の鉄道網の整備と発展に尽力しました。

実業界への転身

鉄道次官を退任後、岡野は実業界に転身し、西武鉄道の副社長に就任しました。1926年（大正15年）には同社の社長に昇進し、経営者としての手腕を発揮しました。また、秩父鉄道や理研工作機械の役員も務め、多岐にわたる事業の発展に貢献しました。さらに、鉄道会議議員、大阪市顧問、信号協会会長など、公的な役職も数多く務め、その広い知見と経験を生かしました。

親族

岡野の親族には、実業家として活躍した息子の岡野祐や、男爵であり官僚、政治家、法学者であった兄の岡野敬次郎、そして甥の岡野節がいます。これらの親族の存在も、岡野昇の人物像を理解する上で重要な要素となっています。

岡野昇の功績

岡野昇は、土木工学者としての専門知識、鉄道官僚としての行政手腕、そして実業家としての経営能力を兼ね備えた人物でした。彼の貢献は、日本の鉄道技術の発展だけでなく、産業界全体にも大きな影響を与えました。彼の生涯は、明治から昭和にかけての日本の近代化を支えた重要な人物の一人として、今日においても高く評価されています。

参考文献

人事興信所『人事興信録 第4版』人事興信所、1915年。
人事興信所『人事興信録 第8版』人事興信所、1928年。
* 高橋裕、藤井肇男 共著『近代日本土木人物事典: 国土を築いた人々』鹿島出版会、2013年。

これらの参考文献は、岡野昇の経歴や功績をさらに詳しく知るための手がかりとなります。特に『近代日本土木人物事典』は、岡野昇を含む近代日本の土木技術者たちの活躍をまとめた貴重な資料です。

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