岩下哲典

岩下哲典氏は、1962年長野県に生まれ、幕末維新史を専門とする歴史学者です。東洋大学文学部史学科で教鞭を執り、大学院では史学専攻の教授として後進の指導にもあたっています。専門は、幕末維新期の情報活動史であり、その研究は、従来の歴史観にとらわれない新たな視点を提供しています。

青山学院大学を卒業後、同大学院で博士号を取得。徳川黎明会や日本学術振興会での研究員を経て、明海大学助教授、教授を歴任し、2003年より現職に至ります。博士論文では「幕末日本の情報活動 : 『開国』の情報史」をテーマに研究を行い、その成果は高く評価されています。

岩下氏の研究は、ペリー来航予告情報や、「金海奇観」といった幕末期の情報伝達の実態解明に留まらず、徳川慶勝、黒田斉溥、松平斉民、松平忠固といった諸大名や、清河八郎、坂本龍馬といった人物像の再評価にも及んでいます。特に「江戸無血開城」に関する研究では、その功労者を山岡鉄舟と高橋泥舟の「幕末の二舟」であると主張し、従来の歴史観に一石を投じています。

また、岩下氏は近年、「江戸の残像」史観を提唱しており、明治という時代の中に、江戸の文化や思想が色濃く残っている点を指摘しています。この視点は、近代日本の歴史を考察する上で重要な観点を提供しています。

著書には、『権力者と江戸のくすり　人参・葡萄酒・御側の御薬』、『江戸のナポレオン伝説　西洋英雄伝はどう読まれたか』、『徳川慶喜 その人と時代』、『幕末日本の情報活動　「開国」の情報史』、『江戸情報論』、『江戸の海外情報ネットワーク』、『予告されていたペリー来航と幕末情報戦争』、『江戸将軍が見た地球』、『日本のインテリジェンス　江戸から近・現代へ』、『江戸無血開城　本当の功労者は誰か？』、『山岡鉄舟・高橋泥舟』など多数あります。これらの著作は、幕末維新期の歴史を多角的に考察する上で、重要な資料となっています。

さらに、共著や編著も多数あり、研究者としてだけでなく、幅広い歴史研究に貢献しています。岩下氏の学術的な功績は、幕末維新史研究の発展に大きく貢献しており、今後の研究活動にも期待が寄せられています。

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