岩佐又兵衛

岩佐又兵衛（いわさ またべえ）の生涯

岩佐又兵衛は1578年に生まれ、1650年にこの世を去った江戸時代初期の絵師である。通称「又兵衛」、本名は勝以（かつもち）で、彼は武士の家に生まれたが、後に画家としての道を選んだ。又兵衛は京都、福井、江戸を巡りながら数々の屏風や絵巻を手がけ、その作品は今も多くの人に親しまれている。その才能から「浮世又兵衛」や「吃の又平（どもりのまたへい）」といった異名も持つ。

幼少期と家族背景

彼の出自は摂津国河辺郡伊丹（現在の兵庫県伊丹市）にまで遡る。父の荒木村重は有岡城主であったが、信長に反逆し、戦の際に落城し一家は斬殺される。その時、数え年2の又兵衛は乳母に抱えられ逃げ延び、石山本願寺で育てられた。後に彼は成人し、母方の姓「岩佐」を名乗るようになり、織田信雄に仕官したと言われている。

画家としての成り立ち

又兵衛が画家の道を本格的に歩み始めたのは成人後であり、彼は文化人との交流を活かしながら、様々なパトロンの下で活動していった。また、関白二条昭実の屋敷にも出入りしており、文化活動を支えていた。しかし、やがて浪人となり、福井に移住する。

福井への移住

元和2年（1616年）、又兵衛は福井に移住した。彼の福井時代は特に多産であり、古浄瑠璃絵巻や池田屏風などの名作が生まれた。彼は越前北ノ庄藩主松平忠直の庇護も受けていたようだが、御用絵師としては活動しておらず、彼と忠直の関係は明確ではない。それでも、彼の作品は福井から広まり、多くの弟子たちが助けてくれたと考えられている。福井での健康で充実した時間が、後の名声を築く基盤となった。

江戸への旅

寛永14年（1637年）、又兵衛は江戸へ向かう旅に出る。江戸幕府の第3代将軍徳川家光からの招待で、家光の娘の婚礼調度を制作するために赴いたとされる。道中の様子は『廻国道之記』に記されており、彼は旅の間に多くの友人と再会し、また自らの年齢や境遇に対する懐疑も挟みつつ、感慨深い記録を残している。

晩年と作品の評価

江戸での活動は多忙を極め、彼は幕府の様々な仕事を手掛けた。名作の一つ、「三十六歌仙図額」は特に有名であり、彼は晩年に描いた自画像も残している。こうした作品の特徴は、劇的なタッチやエネルギッシュな表現にあり、後に浮世絵の源流と見なされる。また、彼の工房も盛況であり、弟子たちとの協力があったことが分かる。

作品と影響

又兵衛の作品には、洛中洛外図屏風や山中常盤物語絵巻、浄瑠璃物語絵巻などがあり、特に彼の描く人物表現には独自のスタイルが際立っている。その肉体的表現は、江戸時代の美術においても特に重要であり、彼の作品は多様な流派の技術を吸収しながら独自の絵画スタイルを築いていたことが示されている。

生涯の終焉

又兵衛は1650年に73歳で亡くなる。彼の墓所は福井県福井市の興宗寺であり、今でも多くの人々に敬われている。息子の岩佐勝重が絵師としての家業を引き継ぎ、又兵衛が生み出した岩佐派は福井藩の御用絵師として活動を続けたが、次第にその姿は消えていった。

評価の変遷

又兵衛の画風や業績は明治時代から再評価され、浮世絵の先駆者としての地位を確立した。近年では、彼の作品が再び注目されるようになり、その名声は作品と共に永続的に語り継がれている。彼の業績は浮世絵の発展においても重要な役割を果たしており、画家としての影響力は今なお多くの研究者や愛好者によって追求され続けている。

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