岩元禎

岩元禎（いわもと てい）

岩元禎は、明治2年（1869年）に鹿児島県で生まれた日本の哲学者です。1941年まで生きました。士族の長男として生まれ、幼少期から学問に励みました。

学歴と師事

1889年に鹿児島高等中学造士館予科を卒業後、1891年には第一高等中学校（後の第一高等学校）本科を卒業しました。1894年には東京帝国大学文科大学（現在の東京大学文学部）哲学科を卒業。大学では、ラファエル・フォン・ケーベルに師事し、哲学の研究に没頭しました。

教育者としての活動

大学卒業後は、大学院に在籍しながら、浄土宗高等学院（現在の大正大学）でドイツ語と哲学を、高等師範学校で哲学を教えました。1899年からは第一高等学校でドイツ語を担当。岩元は、非常に厳格な採点を行うことで知られ、多くの学生が彼の授業で落第しました。著名な落第生には、安倍能成や山本有三がいます。また、学習院高等科時代の志賀直哉には家庭教師としてドイツ語を教えたこともあります。一高では哲学の授業も担当し、授業の冒頭で述べた言葉「哲学は吾人の有限を以て宇宙を包括せんとする企図なり」は、彼の哲学観を表すものとして知られています。この言葉は教科書の表紙にも書かれていました。

哲学と思想

岩元の哲学的な思想は、著書として出版された『哲学概論』（1944年、近藤書店）で知ることができます。この本は、彼の死後に弟子たちによって編纂されたものです。彼の哲学は、人間の有限性と宇宙の無限性との関係を深く考察したものであり、その思想は多くの学生に影響を与えました。

その他の活動と家族

岩元は、教育者としての活動の他に、社会的な活動にも関わっていました。また、彼の家族も多方面で活躍しています。弟の岩元禧は沖縄県知事や鹿児島市長を歴任し、岩元禄は建築学者として知られています。洋画家の藤島武二は、岩元の父のいとこにあたります。

没後

岩元の功績を讃え、横浜市鶴見区の總持寺の墓所には哲学碑が建立されています。また、主な蔵書は鹿児島大学（旧・第七高等学校）の「岩元文庫」に所蔵されており、彼の学問的な遺産は今もなお受け継がれています。

栄典

1922年（大正11年）12月11日、従四位を授与されました。

参考文献

高橋英夫『偉大なる暗闇―師岩元禎と弟子たち』新潮社、1984年
高橋英夫『偉大なる暗闇』講談社文芸文庫、1993年

岩元禎は、厳格な教育者でありながら、深い哲学的な思考を持った人物として、その名は歴史に刻まれています。

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