岩城宏之

岩城宏之（いわき ひろゆき）

岩城宏之は、1932年に東京に生まれた日本の指揮者であり、日本のクラシック音楽界において特に知られた存在です。彼は早くから音楽に親しみ、木琴を始めたのは9歳の頃だったと言いますが、幼少期は病弱であり、数回の大きな病を経験しました。これらの困難を乗り越えながら、音楽への情熱を深めていきました。

1945年、空襲を避けるために金沢市に疎開し、その後岐阜県へと引っ越します。多くの転居を経て、最終的に東京都立日比谷高等学校に編入学。彼が本格的に音楽家を志すきっかけとなったのは映画『オーケストラの少女』を観たことです。この映画が彼の人生に音楽を追求する道を示しました。

1951年、岩城は東京芸術大学音楽学部に入学しますが、学内での厳しい規則に抵抗し、近衛秀麿のオーケストラに参加して演奏活動を始めました。その結果、奏者から次第に指揮者へと移行することになります。このような背景の中で、彼は渡邉暁雄や齋藤秀雄から指揮法を学ぶことに決めました。これが後に彼の指揮スタイルや音楽性に大きな影響を与えることとなります。

岩城は1954年からNHK交響楽団の指揮研究員として活動を始め、最初は副指揮者やライブラリアンとして働きながら、指揮の能力を磨いていきました。その後、彼は1977年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会で指揮を執るなど、国際的にも名声を高めていきます。特に1970年の日本万国博覧会の開会式ではNHK交響楽団を指揮し、その演奏が大きな注目を集めました。

音楽活動において彼は「初演魔」として知られ、特に自身が音楽監督を務めたオーケストラ・アンサンブル金沢では新作の世界初演を積極的に行いました。また、彼は日本の作曲家の作品を多く取り上げ、特に黛敏郎の作品には力を入れて指揮しました。これにより、岩城は日本の現代音楽の振興にも貢献しています。

彼の晩年には特に注目された活動の一つとして、2004年から2005年にかけて行われた『ベートーヴェン全交響曲連続演奏会』があります。これは新年を迎えるカウントダウンコンサートとして行われ、多くの観客を魅了しました。彼はその演奏会において、全交響曲を一人で指揮し、体調に配慮しながらも、その壮大なスケールでの演奏は伝説となりました。

しかし、音楽活動の影で、岩城は数々の病に苦しむことになります。頸椎の病気から始まり、胃がんや喉頭腫瘍に至るまで、彼は続けて健康問題に直面しました。それでも彼の指揮者としての情熱は衰えることなく、数々の名演を残しました。最終的には2006年に心不全のために逝去しましたが、彼の音楽に対する貢献は決して色褪せることはありません。

また、彼は指揮者としてだけでなく、執筆活動も行い、多くの書籍を残しました。彼の著書には音楽理論に関するものや、経験を元にしたエッセイが含まれ、音楽界での様々な活動を記録しています。こうした活動を通じて、岩城宏之は後進の育成にも力を入れ、多くの若手音楽家に影響を与えました。彼の指揮スタイルや音楽への取り組み方は、彼の教えを受けた学生たちによって受け継がれています。

岩城宏之の音楽人生は、波瀾万丈でありながらも、常に音楽の創造と新たな挑戦を求める姿勢で貫かれていました。彼の名は今なお、日本の音楽シーンで深く刻まれており、多くの人々に愛され続けています。

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