岩崎俊一 (コピーライター)

岩崎 俊一

岩崎 俊一（いわさき しゅんいち、1947年7月7日 - 2014年12月20日）は、日本の広告界において独特の存在感を放ったコピーライターです。数々の記憶に残るキャッチコピーや広告文を生み出し、多くの人々の心に響く言葉を届けました。

生涯とキャリア

京都府に生を受けた岩崎氏は、同志社大学文学部心理学科で学びました。大学在学中に師事した教授の縁を頼りに、卒業後は大毎広告社に入社。ここで広告の世界に足を踏み入れます。コピーライターとしての道を本格的に追求するため、1972年に活躍の舞台を東京に移し、レマンやマドラといった広告制作会社で研鑽を積みました。そして1979年、満を持して独立を果たし、「岩崎俊一事務所」を設立。フリーランスのコピーライターとして、その才能を遺憾なく発揮していくことになります。

功績と哲学

岩崎氏が生涯にわたって手掛けたのは、企業のイメージ広告から特定の商品プロモーションに至るまで、多岐にわたる新聞広告やテレビコマーシャル（CF）のためのコピーでした。短いフレーズで強い印象を与えるキャッチコピー（タグライン）から、商品の魅力を丁寧に伝えるボディコピーまで、その作品は膨大な数に上ります。彼のコピーは広告業界で高く評価され、TCC賞、ACC賞、ギャラクシー大賞、読売広告大賞、朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、日経広告賞といった国内の主要な広告賞を軒並み受賞。さらにはカンヌ国際広告賞も獲得するなど、その実力は国際的にも認められていました。

彼のコピーライティングにおける最も特徴的な考え方は、「コピーは、作るものではなく、見つけるもの」というものでした。この哲学に基づき、言葉を技巧的に組み立てるのではなく、伝えたい本質や人の心の奥底にある感情を深く洞察し、すでにそこに存在している「言葉」を見つけ出すかのようにコピーを生み出していきました。この独自の視点が、彼の作品に深みと普遍性をもたらしていたと言えるでしょう。

記憶に残る言葉たち

岩崎氏が手掛けたコピーの中には、今なお多くの人々の記憶に残っている名作が多数あります。以下にその一部を紹介します。

サントリー
「一度、ふられてらっしゃい。」（サントリーオールド）
「あなたに会えた、お礼です。」（ギフトCM）
「テレビは娯楽。ここは極楽。」（サントリーオールド）
資生堂
「髪は弱いものと考える。」（スーパーマイルドシャンプー）
「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。」（アクテアハート）
西武百貨店
「ひとの、幸。」（ギフトキャンペーン）
「会う、贅沢。」（ギフトキャンペーン）
ソニー
「音楽を聴いている。ぼくは生きている。」（ウォークマン）
「聴こえてくるのは、いのちです。」（ディスクマン）
トヨタ自動車
「21世紀に間に合いました。」（トヨタ・プリウス）
「仕事は人を幸せにできる。」（トヨタ・ウィンダム）
その他
「おとなから幸せになろう。」（長谷工コーポレーション - ブライトンホテル）
「少女は無口になった。夏の終わりだった。」（パルコ）
「やがて、いのちに変わるもの。」（ミツカン）
「朝、めざめたら、疲れていた。何の為の睡眠だったのだろう。」（タケダ - アリナミンA）
「がんばる人の、がんばらない時間。」（ドトールコーヒー）

これらのコピーは、商品の特性を伝えるだけでなく、人々のライフスタイルや感情に寄り添うような温かさや哲学的な深みを備えており、広告の枠を超えて広く共感を呼びました。

著作

岩崎氏は自身のコピーライティング哲学や仕事について著書も残しています。

『幸福を見つめるコピー』（東急エージェンシー）

『大人の迷子たち』（東急エージェンシー）


また、広告業界の著名なコピーライターたちとの共著にも参加しており、『ひとつ上のプレゼン。』『ひとつ上のアイディア。』『ひとつ上のチーム。』、『広告コピーの教科書 11人のプロフェッショナルの仕事から伝える』といった書籍で、その考え方や技術を後進に伝えています。

逝去

2014年12月20日、岩崎俊一氏は67歳でこの世を去りました。しかし、彼が広告に残した言葉たちは、今なお多くの人々の心に深く刻まれ、広告史における偉大な足跡として語り継がれています。「コピーは見つけるもの」という彼の哲学は、言葉を生み出す多くのクリエイターに影響を与え続けています。彼の残した言葉は、単なる商品の訴求を超え、人間の営みや社会に対する温かい眼差しを感じさせるものであり、これからも色褪せることはないでしょう。

もう一度検索