岩崎允胤

岩崎允胤：平和主義と唯物論を貫いた哲学者

岩崎允胤（1921年-2009年）は、20世紀後半の日本を代表する哲学者の一人です。一橋大学名誉教授として教壇に立ち、数多くの弟子を育成する傍ら、平和運動にも積極的に関わり、唯物論研究にも深く貢献しました。その生涯と業績を多角的に見ていきましょう。

学問への道：古代ギリシア哲学から現代社会科学へ

東京生まれの岩崎は、東京帝国大学法学部を卒業後、東京大学文学部で学びを深めました。その後、北海道大学を経て一橋大学社会学部教授に就任します。専門は古代ギリシア哲学でしたが、彼の学問的関心は時代や社会状況を反映し、現代社会科学方法論やマルクス主義哲学へと広がっていきました。

指導教授であった日本共産党員（後に除名）の出隆の影響を受け、若い頃はマルクス主義的な立場を明確に示しました。しかし、彼の思想は単なるイデオロギーへの追従ではなく、常に批判的な視点を持ち、独自の発展を遂げていきます。梅原猛や河合隼雄といった当時の著名な思想家への批判的な考察も、その知的探究心の一端を示しています。

平和運動と社会への関与

学問の世界にとどまらず、岩崎は平和運動にも積極的に参加しました。日本平和委員会代表理事等を歴任し、核兵器廃絶や恒久平和の実現に向けて尽力しました。彼の著作にも、平和主義的な思想が強く反映されており、科学技術の進歩と人間の倫理の調和という課題に鋭く迫っています。

多彩な著作活動：哲学、歴史、小説

岩崎は旺盛な執筆活動を行い、数多くの著作を残しました。専門である哲学に関する著書に加え、歴史に取材した戯曲や小説も執筆するなど、その活動は多岐に渡ります。代表的な著書には、『現代の論理学』『現代社会科学方法論の批判』『日本マルクス主義哲学史序説』『核兵器と人間の倫理』などがあります。これらの著作は、彼の思想の深さと幅広さを示すものであり、現代社会の様々な問題を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

多くの弟子たち

岩崎は優れた教育者でもありました。彼の指導を受けた学生の中には、島崎隆、平子友長、柴田寿子ら、各界で活躍する多くの著名な学者や思想家が出ています。彼らがそれぞれの分野で活躍する姿は、岩崎の教育者としての力量の高さを証明していると言えるでしょう。

晩年とその後

晩年は大阪経済法科大学教授として後進の育成に尽力し、自伝的小説なども発表しました。2009年に逝去しましたが、その業績は現在も多くの研究者や学生に影響を与え続けています。彼の思想は、現代社会の複雑な問題を考える上で、常に示唆に富むものとして、未来の世代にも受け継がれていくでしょう。

まとめ

岩崎允胤は、古代ギリシア哲学を基盤としながらも、現代社会の諸問題に鋭く切り込み、平和主義と唯物論を貫いた哲学者でした。学問、平和運動、そして多様な著作活動を通して、彼は日本の思想界に大きな足跡を残しました。彼の生涯と業績は、現代社会を生きる私たちにとって、貴重な学びと示唆に満ちています。

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