岩崎清春

岩崎清春：日本の洋傘製造の先駆者

岩崎清春（1844年 - 1912年）は、明治時代前期に東京で初めて洋傘骨の大量生産を始めた実業家であり、東京市小石川区の区会議員も務めました。彼の事業は、当時の日本の洋傘文化の発展に大きく貢献しました。また、田中鉱山の副社長である田中長一郎は、彼の娘婿にあたります。

生涯と業績

1844年（弘化元年）に生まれた岩崎清春は、東京府士族でした。彼は小石川区白山御殿町に工場を構え、洋傘骨製造及び金属延板製造業を営みました。明治時代初期、洋傘はまだ高級な舶来品でしたが、岩崎は国産洋傘の製造に着目し、1878年（明治11年）2月に横浜のイギリス人商館から原材料を仕入れ、洋傘骨の製造を開始しました。

当時、洋傘の骨は「丸骨」が主流でしたが、1887年（明治20年）頃から軽量で丈夫な「溝骨」が輸入され始めました。岩崎はこれに対応し、1889年から1890年（明治22-23年）頃にかけて、日本で初めて溝骨の製造に着手しました。この革新的な取り組みにより、彼は1890年（明治23年）に上野で開催された第3回内国勧業博覧会で洋傘溝骨製造機械を出品し、二等有功賞を受賞しました。さらに、1890年（明治23年）3月には洋傘骨製造機、1892年（明治25年）1月には洋傘骨弾性回復機の特許を取得しています。また、明治二十七八年戦役では砲兵工廠の嘱託として信管製造も担当しました。

公職と社会活動

岩崎は実業家としてだけでなく、社会貢献にも積極的に取り組みました。1895年（明治28年）12月から1907年（明治40年）11月まで、小石川区会議員を4期務めました。同期議員には鳩山和夫がおり、その妻である鳩山春子とも交流があったとされています。東京には他にも洋傘骨製造業者が存在しましたが、蒸気機械を用いて製造していたのは1902年（明治35年）頃の時点では岩崎の工場のみでした。1903年（明治36年）に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会では、再び洋傘骨を出品し二等賞を受賞しています。

晩年

1907年には小林電鍍合資会社の設立に際し、2000円を出資しました。同年、四女のタカが田中長一郎に嫁ぎ、翌年には長男・長三が誕生しました。洋傘骨製造の先駆けとなった岩崎の工場は、1910年（明治43年）に廃業し、その跡地には御殿町尋常小学校が建設されました。1912年（大正元年）、岩崎清春は生涯を閉じました。工学会会員、日本機械学会賛助会員、日本海員掖済会特別会員、東京鉄工業組合委員などの役職も務めました。自宅は東京市小石川区竹早町にありました。

家族

妻は同じ小石川区に住む石川安五郎の長女・キム子です。三女・みきの夫は福岡出身で婿養子として岩崎家に入った岩崎武治です。岩崎武治は東京帝国大学工科大学の機械工学科を卒業後、三井物産に入社し、後に石油輸入事業を起こしました。

岩崎清春は、日本の洋傘産業の発展に大きく貢献しただけでなく、地域社会の発展にも尽力した人物として、その名が記憶されています。

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