岩村忍

岩村忍について

岩村忍（いわむら しのぶ、生年1905年9月26日 - 没年1988年6月1日）は、日本を代表する東洋史学者であり、特に内陸ユーラシア史と東西交渉史においてその名が知られています。戦後におけるシルクロード学の創始者の一人と称される彼の業績は、日本の歴史学界に多大な影響を与えました。

生い立ちと学問の道

岩村は北海道小樽市に生まれ、旧制小樽中学を卒業後、渡米してオタワ大学で社会学を学びました。1929年に卒業後、日本に帰国し新聞会社に勤務。その後、トロント大学大学院で経済史を専攻し、1932年に修士号を取得しました。満州事変の際には国際連盟のリットン調査団に参加し、中国での研究活動を行ったことが、彼の後の研究に影響を与えたとされています。

彼は戦後、京都大学の人文科学研究所で教授として教鞭を執り、アジアやユーラシアの歴史に広く関心を寄せていました。1950年代にはアジア財団とフォード財団との連携により、東南アジア研究センターの設立に尽力し、1963年から1968年までその所長として活躍しました。最終的には京都大学名誉教授として定年退官しました。

研究と業績

岩村の研究の主な焦点は、遊牧民族に関する歴史と東西間の交流にありました。彼はモンゴル帝国やシルクロードの歴史を詳しく研究し、特にモゴール族に関する調査では、その文化や歴史的背景に新しい光を当てました。1954年から1955年には「カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊」に参加し、中央アジアやアフガニスタンで多くの詳細な調査を行いました。

岩村の代表作には、『モンゴル社会経済史の研究』や、『十三世紀東西交渉史序説』などがあり、これらはシルクロード史や東西交流史に関する研究の基礎として今なお重要な資料とされています。また、一般向けの著書も多く執筆し、特に1980年代に人気を博した『NHK特集 シルクロード』の制作においても、その功績が称えられています。彼は多くの人々にシルクロードの重要性を認識させ、歴史的な視点から東西文化の相互作用を考察しました。

知識人としての影響

晩年、岩村忍は日本モンゴル学会の創設に関与し、初代会長として組織を牽引しました。彼の著作は、戦後の日本におけるシルクロード学とユーラシア研究の発展に寄与し続けており、彼の死後もその重要性は変わりません。特に彼が監修した『南方熊楠全集』は、熊楠の業績を評価する上で不可欠な資料となっています。

受賞と評価

岩村はその学問的功績により、1969年には紫綬褒章を、1975年には勲三等旭日中綬章を受賞しています。彼の仕事は、日本の歴史学における重要な位置を占め、多くの後進たちに影響を与えました。

1988年、癌性腹膜炎により82歳でその生涯を閉じましたが、彼が残した膨大な著作と知見は、今もなお多くの人々に学ばれ、評価されています。岩村忍の業績は、日本を越えた歴史理解の豊かさを示しており、歴史学の発展に対する彼の貢献は永遠に語り継がれることでしょう。

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