岩村暢子

岩村暢子（1953年 - ）は、広告会社ADKホールディングス（旧アサツー ディ・ケイ）にて200Xファミリーデザイン室室長を務めた人物であり、現代家族論の研究者として知られています。

北海道出身の岩村は、法政大学で心理学を専攻し、食卓という日常的な空間を定点観測の場として、1960年代以降に生まれた親たちが形成する新しい家族のあり方を研究してきました。彼女の研究は、単なる家族像の記述にとどまらず、戦後の日本社会における生活史、食文化、そして消費行動の変化を捉える試みとして評価されています。

1998年より継続的に実施されている「食DRIVE」調査は、岩村の研究活動の中核をなすものです。この調査を通じて、彼女は1960年代以降生まれの親世代まで遡り、詳細なデータに基づいて現代家族の食卓の現状を分析しました。また、第二次世界大戦後の日本人の生活史にも精通しており、その知識を活かして、現代社会が抱える様々な問題点についても言及しています。

岩村の著作は、学術的な研究成果を一般読者にも分かりやすく伝えることを意図しており、マーケティング関係者や社会問題に関心を持つ人々からも支持を得ています。

主な著作として、以下が挙げられます。

「変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識」（勁草書房、2003年、のち中公文庫）
この本では、家族の形態や食卓の風景が変化する中で、従来のマーケティングの常識が通用しなくなっている現状を分析し、新たな視点を提供しています。
「〈現代家族〉の誕生 幻想系家族論の死」（勁草書房、2005年）
現代家族の多様なあり方を考察し、従来の家族像にとらわれない新しい家族論を展開しています。
「「親の顔が見てみたい!」調査 家族を変えた昭和の生活史」（中公文庫）
昭和の時代における家族の生活史を詳細に描き出し、現代家族のルーツを探っています。
「普通の家族がいちばん怖い 徹底調査!破滅する日本の食卓」（新潮社、2007年、のち文庫）
現代の食卓が抱える問題点を徹底的に調査し、警鐘を鳴らしています。
『家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇』（新潮社、2010年、のち文庫）
食卓の風景を写真で捉え、家族の喜劇的な日常を浮き彫りにしています。
『日本人には二種類いる 1960年の断層』（新潮新書、2013年）
1960年という年をキーワードに、日本人の価値観やライフスタイルの変化を分析しています。

岩村の研究は、養老孟司、松原隆一郎、雁屋哲といった文化人にも影響を与えており、ADKホールディングスでの活動や、法政大学、和光大学といった教育機関との関わりを通じて、その知見を広めています。彼女の研究は、現代社会における家族のあり方を考える上で、貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

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