岩谷莫哀

岩谷莫哀（いわや ばくあい）は、1888年（明治21年）に鹿児島県で生まれた歌人、編集者です。本名を岩谷禎次（いわや ていじ）といいました。1927年（昭和2年）に39歳で亡くなりました。

生涯

鹿児島県薩摩郡宮之城村湯田（現在のさつま町）に生まれました。旧制川内中学校（現在の鹿児島県立川内高等学校）に進学し、そこで今井白楊と出会い、文学を志すようになりました。彼らは「秀才文壇」などに詩歌を投稿していました。その後、第七高等学校造士館（現在の鹿児島大学）を経て、東京帝国大学法科大学経済学科を卒業しました。大学では、歌人の尾上柴舟に師事しました。

短歌雑誌『車前草』を創刊し、編集者としても才能を発揮しました。また、『桜草』や橋田東聲主宰の『珊瑚礁』など、他の短歌雑誌の編集にも携わり、短歌界で活躍しました。その後、自ら『水甕』を創刊し、この雑誌に力を注ぎました。

1916年には出版社「莫哀社」を設立しましたが、事業はうまくいきませんでした。翌年には明治製糖に入社し、台湾に渡りました。しかし、結核に罹患し、病気のため帰国。茅ヶ崎で療養生活を送りながら、病床で数多くの歌を詠みました。

9歳の時に母親を、22歳の時には父親を亡くしており、若くして両親を失った悲しみが、彼の人生と作品に大きな影響を与えました。「莫哀」という名前は、「哀しむなかれ」という意味が込められていると言われています。処女歌集である『春の反逆』の冒頭には、「亡き父母の霊前に獻ぐ」という言葉が記されています。

故郷の宮之城温泉にある湯之神社には、「み下ろせば薩摩の方へひと筋の川うねうねと流れたりけり」と詠んだ歌碑が建てられています。墓は東京の多磨霊園にあり、同じ区画には歌碑も建立されています。

かつて薩摩川内市で開催されていた青少年対象の「まごころ青春短歌大会」では、その功績を讃え「岩谷莫哀賞」が設けられていました。

著書

歌集
『春の反逆』（莫哀社）1915年
『草路集』（岩谷禎次編、水甕叢書第5編、水甕発行所）1920年 - 尾上柴舟、鈴木康文らとの共同歌集
『仰望』（新詩壇社）1925年
『岩谷莫哀短歌全集』（水甕社）1930年

編書
『現代名歌選』（歌道協会）1926年



岩谷莫哀は、短歌の世界において独自の境地を切り開いた歌人として、今も多くの人々にその作品が愛されています。

参考文献

『春の反逆』（莫哀社）1915年
内田守人『歌人岩谷莫哀研究』（短歌新聞社）1969年

外部リンク

川内まごころ文学館

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