岩間友次

岩間友次氏（いわま ともつぐ）は、1947年に生を受け、2006年3月12日に59歳で逝去した、日本のサッカー界と教育界に足跡を残した人物です。選手、指導者として活躍する傍ら、長年にわたり高校教諭としても多くの生徒を育て上げました。

生涯とキャリア

山梨県立石和高校を卒業後、日本体育大学へ進学。同大学のサッカー部では主将を務め、リーダーシップを発揮しました。大学での学びと経験は、その後の指導者としてのキャリアの礎となりました。

大学を卒業した1969年、山梨県立農林高校に教諭として奉職。以後、山梨県立石和高校、山梨県立山梨園芸高校、山梨県立山梨高校（定時制）など、複数の県立高校で教壇に立ち、教育者として情熱を注ぎました。

教育者としての歩みと並行して、サッカーへの貢献も続けました。1969年からは、後のヴァンフォーレ甲府となる甲府サッカークラブの一員として選手活動を開始。精力的にプレーを展開し、チームに貢献しました。その後、1978年には同クラブの監督に就任。指揮官としてもチームを率いました。

監督の任を終えた後も、岩間氏は山梨県のサッカー振興に深く関与し続けました。山梨県サッカー協会理事として県内のサッカー界の発展に尽力したほか、第41回国民体育大会「かいじ国体」においては、サッカー山梨県代表チームの強化部長を務め、地元開催の国体での活躍をサポートしました。

ヴァンフォーレ甲府がプロサッカークラブとして新たなスタートを切る際にも、その貢献は特筆されます。クラブの法人化にあたり、氏が私財を投じて財政面を支援したことは、クラブの基盤強化、そして念願のJリーグ参入という目標達成に向けた重要な後押しとなりました。Jリーグ参入後も、岩間氏は法人会員としてクラブを支え、夫人と共に毎試合のようにホームスタジアムへ足を運び、温かくチームを見守り続けたといいます。氏が指導した選手の中には、後にプロクラブの監督としてJリーグ優勝を果たす鈴木政一氏のような、日本のサッカー界で指導者として成功を収めた人物もいます。

悲劇的な最期と公務災害認定

長年にわたり教育とサッカー振興に尽力した岩間氏の生涯は、2006年3月12日、悲劇的な形で幕を閉じました。山梨高校での定年退職を間近に控えた夕刻、笛吹市の自宅前において、かつて氏が石和高校で教えた当時42歳の元生徒により刺殺されたのです。享年59歳でした。

この事件の背景には、氏が1982年に石和高校で教諭を務めていた頃の生徒指導があったとされています。当時不登校傾向にあったその元生徒に対し、氏は卒業式前日に式への出席を促すなど指導を行いました。しかし、元生徒はこの出来事を契機に精神的に不安定な状態となり、やがて自身の精神的な不調や困難はすべて岩間氏のせいだという被害妄想を抱くようになったとされています。卒業後も元生徒は氏の自宅を何度か訪れるなど、氏への一方的な執着や恨みを募らせていった末の犯行でした。

事件後、遺族は岩間氏の死が公務災害であるとして補償を求めたものの、地方公務員災害補償基金は職務との間に因果関係がないとして、これを公務外の災害と判断し補償しない決定を下しました。これに対し遺族は不服として、決定の取り消しを求める訴訟を甲府地方裁判所に提起しました。そして2010年1月19日、甲府地裁は遺族側の主張を認め、基金の処分を取り消す判決を下しました。判決では、「長年にわたる元生徒からの迷惑行為は、氏が教諭としての職務の一環として行った指導に端を発しており、事件はそうした経緯の延長線上で発生したものであり、職務との関連性が否定できない」と判断されました。この判決により、岩間氏の死は公務災害として認定されることとなりました。

岩間友次氏は、教育者として、そしてサッカー人として、山梨県に多大な貢献を残した人物でした。教え子やクラブへの深い愛情と情熱を持ち続けたその人生は、悲劇的な事件によって突然断ち切られたものの、その功績と、事件が投げかけた公務災害認定を巡る問いは、今なお語り継がれています。

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