岸一太

岸 一太（きし かずた）について

岸一太は1875年10月28日、岡山県で生まれました。彼の多彩な経歴は、医師としての活動のみならず、工学技師や宗教家としての側面も持ち合わせています。特に、台湾総督府医院の初代医長、台湾総督府医学校教授、さらには工業技術者としても名を馳せました。また、飛行機のエンジン開発においても先駆的な役割を果たしました。

学歴とキャリアの初期

岸は岡山医学専門学校を卒業後、耳鼻咽喉科の権威である金杉英五郎の東京耳鼻咽喉科医院での研修を経て、ドイツで2年間の留学を実施。その後、1902年に台北医院で耳鼻咽喉科の初代主任としての職を得ます。ここで台湾の風土病である甲状腺腫の研究を行い、1906年には医学博士の学位を取得し、台湾総督府医院の医長に就任しました。

技術者と発明家としての活躍

彼の工業分野での功績も見逃せません。1909年に東京で耳鼻咽喉科の病院を開業しながら、様々な工業技術開発にも取り組みました。特に1913年には、自らの名を冠した「岸式人造絹糸」を発明。この特許を基に、翌年には自作の自動車を東京大正博覧会に出展しました。さらに、1915年には「つるぎ号」と呼ばれる飛行機を製作し、続いて「第二つるぎ号」を完成させるなど、航空技術でも優れた業績を残しています。

飛行機産業と宗教活動

岸は1917年に飛行機の一貫生産を目指して「赤羽飛行機製作所」を設立。これは彼の医師から工業技師への転身を象徴するものでした。また、彼は大本教に入信し、神道系宗教団体「明道会」を立ち上げました。この団体は教義に基づいた活動を行い、多くの信者を擁しましたが、岸は後に詐欺罪で逮捕されることになります。精神鑑定の結果、誇大妄想の患者として扱われ、起訴は免れましたが、その影響で信者の減少が続きました。

晩年と死

1937年に岸は病気により逝去しますが、彼の業績と影響は長い間その後の航空技術や宗教界に残ることになります。その生涯は多くの挑戦と革新的なアイデアに満ちており、技術者と宗教家の二つの側面を持ち合わせた波乱万丈なものでした。岸の墓所は多磨霊園にあります。

著作とその他の業績

岸はまた多くの著作を残しており、その中には「下北砂鐵製錬ニ関スル研究」や「神霊と稲荷の本体」などがあります。これらの記録は、彼の思想や専門的な知識を知る上で重要な資料となっています。彼の幅広い業績は、当時の日本における科学、技術、宗教の発展に大いに寄与しました。

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