岸上大作

岸上大作の生涯と作品

岸上大作（きしがみ だいさく、1939年10月21日 - 1960年12月5日）は、日本の短歌を詠む歌人であり、兵庫県神崎郡田原村井ノ口（現・福崎町西田原）に生まれました。戦後の日本において、彼の短い生涯と作品は多くの人々に影響を及ぼしました。

人物の背景

岸上は、戦病死で父親を失った後、母親まさゑと共に貧困な家庭で育ちました。母親は彼に多大な愛情を注ぎましたが、家計には苦労が絶えませんでした。彼は長男としてこの家庭において、強い責任感を持ちながら成長しました。中学時代には社会主義に関心を持ち、後に兵庫県立福崎高等学校へ進学します。ここで文芸部に加入し、詩や俳句、小説も手がけるようになりました。

しかし、彼の作品は次第に短歌にフォーカスを当てるようになり、歌誌「まひる野」に入会し、短歌の道を志すようになります。その後、國學院大學の文学部で学びながら、安保闘争に参加し、そこで負傷する経験をしました。彼の作品『意志表示』は、1960年の秋に安保闘争や恋愛をテーマにしており、第3回短歌研究新人賞で推薦次席を受賞するなど、評価を受けました。

岸上は「東の岸上大作、西の清原日出夫」と称され、当時の学生歌人として名を馳せましたが、著名な詩人である寺山修司との関係は複雑でした。ふたりは最初は親しい関係でしたが、政治的な理由からの対立が生じました。

自殺と作品の影響

岸上は1960年12月、失恋を理由に下宿先で自ら命を絶ちました。その死は文学界に衝撃を与え、彼の作品は彼の死後に多くの人々の手に渡ることになりました。彼が残した『ぼくのためのノート』は、寂しげな彼の心情を表した作品として知られています。

彼の著書は、すべて彼の死後に刊行されました。有名な作品集『意志表示』は1961年に出版され、その後に日記や他の作品も次々と出されました。特に『もうひとつの意志表示』や『青春以前の記』などは、彼の思考や日々の生活を深く掘り下げた内容として知られています。これらの書籍は、彼の短い生涯と彼が抱えた社会的な不満を反映しています。

作風とテーマ

岸上の詩作は、初期には戦争で亡くなった父への思いを表したもので、後には安保闘争や恋愛、家庭、社会主義といったテーマが浮かび上がります。特に『意志表示』においては、彼にとって非常に重要な出来事が描かれており、貧困や社会問題を織り交ぜながらも、感情豊かな表現が印象的です。

作品は、恋愛や家庭のことを語りながらも、同時に当時の政治状況や社会の困難を直視しています。

現在の評価

現在、故郷である兵庫県には姫路文学館があり、岸上の作品を展示するブースが設けられています。彼の持つ独自の視点や表現力は、今でも多くの人に感動を与えており、彼の短歌は多くの文学愛好家によって読み継がれています。岸上の作品は、時代を超えて人々の心に響くものであり、それが彼の作品の持つ力であるといえるでしょう。

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