島田裕子

島田裕子

日本の法学者、島田裕子（しまだ ゆうこ）氏は、労働法を専門分野として研究活動を行っており、京都大学法学研究科の准教授として教鞭をとっています。

経歴

島田氏は京都大学法学部を卒業後、同大学大学院法学研究科の法曹養成専攻、いわゆる法科大学院に進学しました。当初は弁護士を目指していましたが、法科大学院で触れた労働法の奥深さや社会における重要性に魅力を感じ、研究者としての道に進むことを決意します。この進路変更には、指導教員からの助言も影響があったとされています。2009年に法務博士（専門職）の学位を取得し、同大学法学研究科の助教に着任。その後、研究者としての実績を積み重ね、2012年には同学科の准教授に昇任し、現在に至ります。

主な研究テーマと業績

島田氏の研究は、労働契約法を中心とした現代日本の労働法における喫緊の課題に焦点を当てています。特に、非正規雇用を巡る法的論点や、多様な働き方に対応するための法制度のあり方について深く考察しています。主な研究テーマとしては、有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の格差、特に賃金に関する労働契約法第20条（現行法では第8条・第9条）が定める「不合理な相違」の判断基準や、比較対象となる無期契約労働者の範囲に関する問題に取り組んでいます。これらの研究成果は、「有期労働者の賃金に関する労契法20条の不合理性判断」（『民商法雑誌155巻 第2号』、有斐閣、2019年6月）や、「労契法20条で比較対象となる無期契約労働者の範囲」（『民商法雑誌154巻 第4号』、有斐閣、2018年10月）といった論文として発表されています。

また、「同一労働同一賃金」という現代の雇用慣行において最も重要な法政策の一つについても研究を進めており、その成果は「『同一労働同一賃金』の法政策」（『日本労働法学会誌 132巻』、日本労働法学会、2019年5月）として発表されています。これは、雇用形態に関わらず、同じ労働に対して同じ賃金を支払うという原則を法的にどのように実現していくかを探る重要な研究です。

その他にも、雇用終了に関する問題、例えば、雇止めの有効性判断基準や、不当な解雇に伴う損害賠償請求、さらには就業規則の不利益変更に関する労働者の同意の効力についても研究対象としています。具体的な論文としては、「対象者選別基準の説明不足により雇止めを無効とした例」（『民商法雑誌151巻 第2号』、有斐閣、2014年11月）、「無効な解雇と不法行為に基づく逸失利益の賠償請求」（『民商法雑誌149巻 第1号』、有斐閣、2013年10月）、「就業規則の不利益変更に関する労働者の合意の効力」（『民商法雑誌142巻 第4-5号』、有斐閣、2011年5月）などが挙げられます。

さらに、労働者を取り巻く権利義務関係や公益とのバランスについても考察しており、例えばドイツの内部告発者保護に関する法制度を分析した「労働者の誠実義務・基本権・公益 ーー衝突しあう価値の緊張関係の中にあるドイツの内部告発者に関する法ーー」（『民商法雑誌151巻 第4-5号』、有斐閣、2015年1月）といった比較法的な研究も行っています。これらの幅広い研究活動を通じて、島田氏は現代社会における労働法の課題解決に向けた学術的な貢献を続けています。

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