崇徳院 (落語)

崇徳院（すとくいん）

概要

「崇徳院」は古典落語の一つで、別名には「皿屋」や「花見扇」があります。この演目はもとは上方落語に起源を持ちますが、後に江戸落語にも影響を与えました。江戸では三代目桂三木助の得意な演目となったことで知られています。一般的には初代桂文治がこの話を作ったとされていますが、五代目三遊亭圓生の速記本によれば、人情噺「三年目」の一部として最初に披露されており、独立した話としての解釈も存在します。

演題の「崇徳院」は崇徳天皇を指し、特に『小倉百人一首』に収められている和歌「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川のわれても末に あはむとぞ思ふ」が、この落語の結末部分と関連しています。

あらすじ

物語はある大店の若旦那が病床に伏せるところから始まります。彼の父、大旦那は、名医たちに治療を依頼しますが、医者はこれは気の病であると説明します。若旦那が心の底で抱えている強い思いを解消することができれば、快方に向かうと告げるのです。しかし、若旦那はそのことをなかなか明かそうとしないため、日々の衰弱が進んでしまいます。

そこで、大旦那は熊五郎という職人に若旦那の心の内を探るように依頼します。若旦那は、偶然に出会った美しい女性に心を奪われ、その思いが晴れないことを打ち明けます。20日ほど前、彼は寺社に参詣した際、休憩所で出会った17、8歳の娘に一目惚れしてしまったのです。彼女が帰る際に落とした茶帛紗を拾い上げ、追いかけて渡すと、彼女は和歌の上の句を記した紙を彼に手渡しました。しかし、相手が誰かわからないため、若旦那は更なる恋煩いに悩むことになります。

若旦那の重病を耳にした熊五郎は、3日間という短い期間でその娘を探し出すよう命じられます。そして、奮闘の始まりです。最初の2日間は、熊五郎の行動がうまくいかず無駄に過ごしてしまいますが、彼の妻からのアドバイスを受け、街の風呂屋や床屋で「瀬をはやみ」と叫ぶ作戦に打って出ます。

3日目、彼は朝から街の床屋を巡りますが、何の手がかりも得られません。途中、同じ歌が好きな男に出会うものの、彼は幼い子どもであるため無念の思いをしたりします。日が暮れても成果がなく、最後には剃りたい髪も髭もないという状況に追い込まれた熊五郎。

しかし、ついに最後の床屋で思わぬ展開が待っていました。その床屋に偶然やってきた他の客が、出入りの大店の娘が恋煩いで重病だと話しているのを耳にします。出会った若旦那に一目惚れしたこの娘の父が、大金を用意して彼を探す手伝いを募っているという情報が飛び込んできます。

聞いていた熊五郎は思わず立ち上がり、そこに現れた男に掴みかかります。それこそが自分が探し求めてきた娘だったのです。二人はお互いに褒美のために相手を見つけようとするあまり、争いになりますが、その拍子に床屋の鏡が割れてしまいます。店主は騒ぎ立てますが、熊五郎は機知に富んだ言葉で切り返し、観客に笑いを与えるのです。

まとめ

この落語のサゲは、下の句「われても末に あはむとぞ思ふ」に関連した洒落です。ここでの「末」は当時一般的な月末のことを指し、江戸時代には30日払いが一般的でした。このような言葉遊びや人情劇が織りなす面白さが「崇徳院」の魅力に他なりません。本作は、今なお多くの落語ファンに親しまれる名作です。

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